キングコング西野から学ぶ作品のマーケティング戦略【書評】革命のファンファーレ

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お笑い芸人キングコングの西野亮廣をご存じだろうか。

彼は今テレビには一切出演せず、クリエイターとして活躍しているそうだ。

そして西野が作った絵本は、なんと40万部を超える大ベストセラーになっている。

 

一般的な書籍の場合、ヒットの目安は数千部以上、大ヒットは2万部以上、ベストセラーは10万部以上が目安とされているそうだ。

 

  • ヒット:数千部
  • 大ヒット:2万部
  • ベストセラー:10万部

 

これをみると絵本40万部というのは異常な数字だとわかるだろう。

どうやってそんなに絵本を売ったのか、その裏側が解説されている本が面白かったので紹介する。

自分もブログにコンテンツを書くクリエイターの端くれ(仮)なので興味深く読むことができた。

絵本の広告戦略

 

作品は生み出しただけではダメで、客の手に届いてようやく作品を生んだとカウントされる。

客の手に届くまでの導線作りも制作の一部だというのが彼の主張である。

お客さんの手に届くまでの導線作りも作品制作の一つだ。導線作りができていない作品は未完成品という認識を持った方がいい。

 

もちろん作品の質が担保されていることが最低条件ではあるが、良い作品であれば売れるというわけではない。

彼が力を入れるのが広告戦略である。

かといってテレビCMをガンガン打つような従来のマスメディアを使った戦略ではないところが面白い。

具体的な戦略を紹介していく。

 

①無料公開

まず彼が行ったのは絵本の無料公開である。

これはフリーミアムモデルといって、webの世界では一般化している。

スマホゲームのように無料でプレイできるが、アイテムの購入などで課金するビジネスモデルのことだ。

これを絵本でやったのが画期的なところである。

しかし作品を無料公開してしまったらどうやって課金を行うのか。

 

ヒントは紙の本としての絵本の価値にあるそうだ。

絵本は内容よりも、読み聞かせという「コミュニケーションツール」としての機能が重視されているのだという。

 

ここがスゴイところなのだが、無料公開されている絵本はあえて読み聞かせに不便なようにデザインされているそうだ。

普通絵本は横にめくっていくが、ネット上の絵本は画面が縦スクロールになっていて読み聞かせには使いにくい。

つまり「読み聞かのために購入してください」というわけだ。

 

それではビジネス書ではどうだろうか。

無料公開の場所をブログやメルマガ、フェイスブックなどネット上で散らせば、フリーミアム戦略は可能なのだという。

ネット上で情報を集めるのは面倒なので、本を買ってしまった方が早い。

実際に「革命のファンファーレ」は無料公開場所を散らして、予約段階で2万部を売ったそうだ。

 

購入につながるデザインを工夫すれば、書籍でもフリーミアムモデルは可能である。

この戦術はいろいろな分野に応用ができそうだ。

 

②客を巻き込む

最近はSNSで客に宣伝してもらう戦術が普及してきている。

飲食店ではインスタ映えするメニューで集客するのが一般的になってきているようだ。

 

でも絵本をどうやってインスタ映えさせるのか。

なんと「えんとつ町のプペル」は正方形に作られているのだという。

その理由はインスタにアップしやすくするため。

SNSでの拡散まで計算してデザインされているわけである。

 

さらにもう一つ客を巻き込む仕掛けがある。

それはクラウドファンディング。

西野は資金をクラウドファンディングで募って制作を開始したそうだ。

でもこれは資金が必要だったからではない。

資金を出した人と一緒に制作したという一体感を出すためである。

 

さらに制作過程を公開して、ファンとの一体感を演出することも忘れない。

これで完成までの過程も作品になるわけだ。

すべての工程を集客につなげる貪欲な姿勢に驚かされる。

 

③イベント

次の仕掛けはイベントである。

彼は全国で絵本の個展を開催している。

個展の会場で絵本を販売すると、お土産としてバカ売れするのだという。

仮に書店で売れなかったとしても、イベントで集客ができれば販売数を稼ぐことができる。

 

出版記念のサイン会などはよく聞くが、西野のイベントは個展なのでもっと長期間続けることが可能である。

さらに個展の開催権をファンに販売するという徹底ぶりである。

他人にイベントを開催してもらうことで、自分は手を動かさずに売り上げを伸ばすことができる。

 

おまけに絵本の舞台は渋谷をモチーフにしており、ハロウィンイベントともタイアップできるという念の入れようだ。

 

④資金の調達

最後にここが一番重要なところなのかもしれない。

西野は作品でお金を稼ぐことを目的としていないのである。

 

彼の作品には莫大な広告費がかかっており、ほとんど利益は出ていないそうだ。

それがなぜ可能なのかというと、彼にはオンラインサロンという別の収入源があるからである。

 

オンラインサロンは月1000円の有料メルマガで、会員数は6万人以上。

これで、ほとんどコストをかけずに数億円の利益を得ることができている。

そのお金を創作に流用することで利益度外視の作品を作ることができるのである。

 

さらに作品が売れることでオンラインサロンの宣伝となり、会員が増えれば制作と広告に使えるお金が増えるという好循環を生み出している。

もはや完全なチート状態。

創作でお金を稼いでいる人に比べて圧倒的に有利な立場である。

 

ここまでやれば売れるのは必然である。

クリエイターなら作品の質だけで勝負しろ、という声もあるだろうけど、これが新しいクリエイターの姿なのだろう。

 

まとめ

 

人生で1冊は本を出版してみたいという願望がある人は多いのではないか。

しかしホリエモンによると出版はまったく儲からず、ビジネスとしてはコスパが悪すぎるそうだ。

 

それではなぜ本を出すのか。

理由はセルフブランディグと宣伝効果とのこと。

紙の本には権威がある。著書が書店に並んでいれば、それがトンデモ本だったとしても権威がある人だとみなされる。

たとえ売れなかったとしても、ホリエモンの言う通りブランディグのために本を出すというのはアリだろう。

 

しかし出すからにはある程度売れてほしい。西野の本はそんな人の参考になるような内容だと思う(むちゃくちゃハイレベルだが)。

 

もしかすると医学書の広告戦略などにも応用できるかもしれない。

実践するとしたら、まず無料公開はやってみたいところである。

さらにインスタ映えするような仕掛けを本のなかに組み込めるかどうか。

そして最近はWebセミナーが流行ってきているから、Webでイベントを開催することは可能かもしれない。有料セミナーの参加者に本を進呈するわけである。

お笑い芸人だと少しバカにしていたけど、マーケティングについて学べる面白い本だった。

Source: 皮膚科医の日常と趣味とキャリア

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