皮膚科医の抗ヒスタミン薬の使い方(前編)

その他ドクター

 

抗ヒスタミン薬にはたくさんの種類がある。

蕁麻疹に対する抗ヒスタミン薬についての記事はいままでいくつか書いてきたが、今回決定版を作成したいと思う。

使い分けのポイントは2つ。

 

  • 効果
  • 副作用

 

今回はまず副作用について考えてみる。

抗ヒスタミン薬の使い分けの図

 

①眠気

 

蕁麻疹が治らないといってドクターショッピングしてくる患者の中に、眠くなるのでしっかり内服できていない人がいる。

そのため最初は眠気の少ない薬を処方するのが基本である。

 

抗ヒスタミン薬は第一世代と第二世代に分けられる。

第二世代のほうが眠気の副作用が少ないため、基本的に第二世代を使用するのが望ましい。

 

しかし第二世代の薬剤の中でも眠気に差がある。

そこで添付文書を参考にしてみる。

自動車運転に関しての記載で抗ヒスタミン薬は3種類に分類される。

 

  1. 自動車運転が可能な薬剤
  2. 自動車運転に注意する必要がある薬剤
  3. 自動車運転を禁止する必要がある薬剤

 

自動車運転が可能な薬剤はアレグラ、ビラノア、クラリチン、デザレックスの4剤である。

これらの薬剤は眠気が少ないと考えられ、第一選択となる。

それでもダメなときは、眠気はあるが効果が高い(可能性がある)ザイザルやルパフィンを使用する。

(効果の高さについては次回解説)

 

②安全性

 

それでは第一選択薬の中からどんな基準で選択すればいいだろうか。

そこで考えるのは安全性である。

以下の5項目について検討してみる。

 

  1. 高齢者
  2. 肝障害
  3. 腎障害
  4. 授乳中
  5. 妊娠中

 

再び添付文書を見てみる。

添付文書に高齢者、肝障害、腎障害の注意事項が記載されていない薬剤はこちら。

 

  • 高齢者可:アレグラ、ビラノア
  • 肝障害可:アレグラ、ビラノア
  • 腎障害可:アレグラ

 

次に授乳中に使用可能な薬剤は「国立成育医療研究センター」のホームページに記載されている。

授乳中可:アレグラ、クラリチン、デザレックス

授乳中の薬(一覧表) | 国立成育医療研究センター
「授乳中安全に使用できると考えられる薬」「授乳中の使用には適さないと考えられる薬」の表は授乳中の薬の使用に関する国内外の様々な最新の医学的研究に基づいて作成しています。個々の薬についてこれまでの情報をもとに評価を行い、授乳期でも安全に使用できると考えた薬を載せています。

 

最後に妊娠中に使用可能な薬剤は「妊娠と授乳」を参考にする。

妊娠中可:クラリチン、デザレックス

 

これらをまとめて表にすると以下のようになる。

抗ヒスタミン薬の副作用の図

 

アレグラはかなり安心、安全な薬剤である。

(ただし効果は若干低い可能性があるので、その辺は次回解説)

 

③剤型、食事の影響

 

それでは特に注意の必要がない一般人の場合は、ビラノア、クラリチン、デザレックスのどれを選択するのか。

効果には大きな差はなさそうだが、食事の影響と剤型から考えてみる。

 

1)食事の影響

まず食事の影響があるかどうかである。

 

食事の影響

  • ビラノア:血中濃度60%低下
  • クラリチン:なし
  • デザレックス:なし

 

ビラノアは食事の影響を受けるので、食事の1時間以上前か食後2時間以上あけて飲む必要がある。

これが意外とやっかいで、飲むタイミングが意外と難しかったりする。

(自分は食後2時間以内に寝たり、起きてすぐ食事したりするので)

生活が不規則な人はクラリチンやデザレックスのほうがいい気がしている。

 

2)剤型

次に剤型について考えてみる。

 

  • ビラノア:錠
  • クラリチン:錠・レディタブ錠
  • デザレックス:錠

 

ビラノアとデザレックスは錠剤のみ。

クラリチンはレディタブ錠(口腔内崩壊錠)があるのが特徴。

レディタブ錠はOD錠と違って、舌の上で瞬時に溶ける。

嚥下障害のある患者には便利である。

 

まとめ

 

今回は副作用の面から抗ヒスタミン薬の使い分けについて解説した。

まず眠気が少ないアレグラ、ビラノア、クラリチン、デザレックスの中から選択するのがいいだろう。

 

次回は効果の面から考えてみたい。

つづく

Source: 皮膚科医の日常と趣味とキャリア

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