糖尿病を発症した時の年齢によって,その後の病状進行速度は異なるのではないか,という学会報告がありました.
高齢になってから 初めて発症した糖尿病の進行速度は,若い時に発症するよりも 遅いということです.
594人の糖尿病患者を罹患履歴別にグループ化して,高齢者(65歳以上)と非高齢者(65歳未満)を比較しています.
罹病履歴10年未満のグループでは;
HbA1cの差は有意でした.つまり同じぐらいの罹病期間でも,70歳近くの高齢になってから発症した人のHbA1cは,40代に発症した人よりもHbA1cが有意に低かったのです.このことは
高齢になってから発症した糖尿病は進行(=HbA1cの悪化)が遅い
ことを示唆しています.
更に高齢者の平均BMIは 24.2なのに対して,非高齢者では 29.4と明らかな肥満です.
なお,収縮期血圧,中性脂肪,HDL,LDLでは 両者に有意差はありませんでした.ただし,拡張期血圧だけは 非高齢者:80.7 高齢者:75.7と有意差がありました.
この傾向は罹病期間 10-19年のグループでも同様の傾向でしたが,罹病期間が20年以上となると もはや差がみられませんでした.
また,罹病期間10年未満の,高齢になってから発症した糖尿病患者の投薬量は,投薬なし又は単剤のみが 64.7%であったのに対して,非高齢者では47.3%でした. つまり高齢で発症した糖尿病は HbA1cがそれほど高くならないので,『たしなむ』程度の投薬で十分という人が多いことをうかがわせます.
若い時に発症した糖尿病と,高齢になってから発症した糖尿病とは,全く別の病気であると,2018年にスウエーデンの E.Ahlqvist博士が既に指摘しています.
Ahlqvist分類では,MARD(Moderate Age-Related Diabetes:軽度加齢性糖尿病★)は 広い意味の加齢現象であり,糖尿病の進行は緩やかで,かつ 特定の合併症が発生しやすいという特徴をもたない,つまり『特徴がないことが唯一の特徴』なのです.
一方で,中年期までに発症した糖尿病は MOD(Moderate Oebsity Diabetes:軽度肥満性糖尿病★)が多いです.
これらのAhlqvist分類は,上記の学会報告とよく一致しています.
★:私はMARDは『単純加齢性糖尿病』,MODは『単純肥満性糖尿病』と訳す方が,より適切に特徴を表していると思っています.
[11]に続く
Source: しらねのぞるばの暴言ブログ
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