陰キャと進化心理学【コロナ禍で浮かび上がる陰キャ遺伝子の強さ】

その他ドクター

 

COVID-19の出現によって世界は大きく変わってしまった。

一番変化したのは我々の生活スタイルだろう。

Stay Home。

 

家の中に閉じこもるのは、多くの人にとって耐えられないことらしい。

しかし自分のような陰キャにとっては、家にいることに大義名分が与えられたことも事実である。

 

以前進化心理学についての記事を書いた。

ハッピーマニアから学ぶ進化心理学

安野モヨコのマンガ「ハッピーマニア」を読んだ。

主人公はふるえるような恋愛がしたい重田カヨコ。

そんなカヨコと、彼女に一途に思いを寄せる高橋君の2人の恋愛を描くストーリーである。

カ…

今回は陰キャと進化心理学について考えてみる。

 

進化心理学とは?

 

まず進化心理学の復習から。

ヒトの歴史を振り返れば、200万年間の旧石器時代があり、農耕が始まったのはわずか1万年前。

そのためヒトの遺伝子は、まだ旧石器時代のままである。

このようなヒトの進化の過程から、体のしくみなどを解明するのが進化論である。

進化心理学の図

 

ヒトのからだが進化によってつくられたように、私たちの心や感情も進化の過程でつくられ、遺伝的にプログラムされている。

つまり感情も旧石器時代に最適化されている。

そう考えれば一見不合理に思われる人間のいろいろな感情も論理的に説明することができる、というのが進化心理学である。

 

残酷すぎる成功法則

 

それではここから陰キャについての話。

アメリカでベストセラーになったエビデンスベースドの自己啓発本「残酷すぎる成功法則」。

この中に「内向的な人間と外向的な人間のどちらが成功するのか」という項目がある。

 

データによると、外向的な人は地位や高収入などの成功を手に入れる確率が高いのだという。

さらに外向性は、仕事の満足度、給与水準、昇進の回数とも相関関係がある。

 

この理由は人脈にある。

外向的な人には豊富な人脈がある。

社会的な成功のためには人脈が重要で、人脈の広さは給与の増加率と相関するそうだ。

 

というわけで「社会的に成功するのは外向的な人間」ということがデータで実証されたわけである。

 

職場で業績をあげている人を見つけるためには、ランチのテーブルを見ればよいそうだ。

昼食時に大勢とテーブルを囲んでいる人が、高い業績をあげている社員である。

 

内向的人間には生きる価値がないのか?

 

でも「社会的成功だけが人生の目的ではない」という考え方もあるだろう。

これに関しても、外向性と主観的幸福感が相関するというデータがあるのだという。

 

外向的な人間は社会的に成功し、人生の幸福度も高い。

内向的人間にとっては救いのない話である。

 

ただしニュートンなどの高度にクリエイティブな人間は内向的なのだそうだ。

何かの道を極めるためには、人付き合いなんかに費やせる時間はない。

世界的な成功を収めるためには極端な内向性が必要になる。

 

しかしこれはごく一部の天才の話。我々一般人にとってはあまり関係がない。

普通の内向的人間には生きる価値がないのか。

しかし内向的人間の救いになる書籍も存在する。

 

内向的人間のすごい力

 

社会的には外向的性格が理想で、内向的性格は二流の性格特性とみなされる。

教育においても内向的性格は異常とされ、矯正の対象となっている。

 

しかしアメリカのジャーナリスト、スーザン・ケインによると、外向性、内向性は刺激に対する反応の違いであって優劣ではないのだという。

 

内向的人間は、視覚、聴覚、嗅覚などへの刺激に対して「高反応」。

そのため刺激に対して敏感で疲れてしまう。

だからなるべく多くの刺激を受ける場面を避けようとする。

 

一方、外向的人間は刺激に対して「低反応」。

そのため外交的にふるまえるというわけである。

 

高反応の人間のほうが物事をよりしっかり見て、より深く感じることができる。

外向的人間をややディスったこの記載は、我々内向的人間の溜飲を下げてくれる。

 

進化心理学と内向性

 

次に進化論的に考えるとどうだろうか。

生物は進化の過程で、繁殖に不利な特性は淘汰され、有利な特性だけを残してきた。

 

外向型の人間は多くの相手と関係を結ぶことができる。

つまり種の繁栄という観点では非常に有利なはずである。

 

一方、内向型の人間は繁殖力で劣るのは間違いない。

それではなぜ内向型の人間が淘汰されずに残っているのだろうか。

 

本の中では、内向型の人間は注意深く、捕食動物に食べられてしまう可能性が低いという説が挙げられている。

そのため外向型は繁殖力では勝るが、寿命という点では内向型に劣るのだ。

 

内向型、外向型、それぞれに長所短所があり、みんなちがってみんないい・・というわけである。

 

さらに現在の世界情勢を踏まえて考えてみたい。

外向型は多くの人間との交流を好む。その分感染症のリスクは高いはずである。

一方内向型の人間のほうが感染症のリスクは低い。

 

これまで人類は多くの感染症に襲われてきた。

二流の性格特性とみなされる内向性は、感染症が蔓延した世界で生き残るための性格なのかもしれない。

 

まとめ

 

哲学者パスカルは

「すべての人間の不幸はただ一つのことから来る。それは部屋で静かに休んでいることができないということである」

と説いたのだという。

 

コロナ禍はパスカルが喝破した人間の原則を地で行っている。

今こそ陰キャ遺伝子の力を存分に発揮するときである。

Stay Home。

 

つづく

次回はTwitterと進化心理学について

Source: 皮膚科医の日常と趣味とキャリア

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