最近、「闇金ウシジマくん」を読破した。
これまで何度も挑戦してきたが、あまりにも気が重くなる内容なので毎回挫折。
しかしDMMブックスの70%オフキャンペーン(60億の損失を出して会社が潰れかけたらしい)で全巻購入してようやく読破できた。
ウシジマくんのエピソードは大きく2つに分かれている。
- 債権者にスポットを当てた話
- ウシジマくんにスポットを当てた話
ウシジマくんにスポットを当てた話は、半グレやヤクザと殺し合いをするバトルマンガで全然面白くない。
白眉は債権者にスポットを当てた話である。
同じ金貸しのマンガとして有名な「ナニワ金融道」は借金の怖さを描いた教訓的な作品。
一方ウシジマくんは借金をせざるを得ない人たちを通して、社会の闇を描いた作品になっている。
一歩間違えば自分もこうなっていたんじゃないか。
そんな他人事とは思えないリアリティと恐怖がこの作品の魅力である。
今回は全27エピソードの中からベスト3を選出してみる。
第3位:サラリーマンくん(10巻~12巻)
主人公は医療機器メーカーに勤める33歳の営業マン小堀。
顧客である医者からは無理難題を要求され、上司からは連日のパワハラ、後輩からは馬鹿にされる日々を送っている。
医者の立場からすると身につまされる話である。
▼土下座して謝る小堀▼
(闇金ウシジマくん10巻より)
さらに仕事から帰っても家庭が癒しとなるわけではない。
妻からは金銭面や家事の分担で突き上げられる。
あらゆる行動が裏目に出て、職場と家庭の両方から追い詰められていく一連の描写はリアリティがあって痛々しい。
最終的にうつ病になってしまった彼がたどり着いた結論は、「一生懸命が報われなくてもコツコツ働いて家族を養えればそれでいい」。
一生懸命が報われない社会でも、サラリーマンは粛々と仕事をすればそれでイイ。コツコツ働いて家族を養えればそれでイイと思うんだ。
(闇金ウシジマくん12巻より)
「やりがい」とか「好きを仕事に」とか叫ばれる世の中だが、やりがいもなく日々を淡々と生きるしかないのが現実なのかもしれない。
正直、営業のセンスがあるとは思えない自分には、こんな現実もありえたに違いない。
そうリアルに感じさせられるエピソードだった。
第2位:中年会社員くん(29巻)
このエピソードは「サラリーマンくん」よりさらに深刻度が上がる。
主人公は2人。
1人は一流企業に勤める40代のサラリーマン加茂。
上司に媚び、同僚を蹴落として組織の中で生き抜いてきたが、身につけたスキルは特にない。
(闇金ウシジマくん29巻より)
40代になった彼は会社にしがみつく以外に生きる術はなく、家庭にも居場所がない。
そんな虚無感を埋め合わせてくれるのはキャバクラだけ。
もう一人の主人公は加茂の同僚である曽我部。
彼は「やりがい」という言葉に惹かれ、40代で心機一転ベンチャー企業への転職を果たす。
(闇金ウシジマくん29巻より)
しかしそこで待っていたのは厳しい現実(ブラック労働)だった。
会社にしがみついても、飛び出しても地獄。
そんな二人の中年会社員の実像は他人事とは思えない。
何のやりがいもなく会社にしがみつき、キャバクラで寂しさを紛らわす。
自分にもそんな現実があったかもしれない。そうリアルに感じさせられるエピソードだった。
(闇金ウシジマくん29巻より)
第一位:フリーターくん(7巻~9巻)
名作エピソードとして名高いフリーターくん
主人公の宇津井は35歳にもかかわらず定職につかず、実家に寄生して借金までしているフリーター。
心の中で周りの人間に毒づくことでプライドを維持している。
自分にも身に覚えがある思考である。
(闇金ウシジマくん7巻より)
しかし現実は、バイト先の年下に説教される毎日。
この状態でも「詰み」だが、さらに転落してしまうのがこの話の恐ろしいところ。
ネットカフェ難民からホームレスへ。
社会の闇をリアリティをもって感じさせてくれる。
(闇金ウシジマくん9巻より)
宇津井のことは、決して他人事では無い。
かつて学校に馴染めなかった自分も、もし学校教育からドロップアウトしていればフリーターになっていただろう。
転落生活によって人間的に成長を遂げた宇津井は、真面目にコツコツ働くことに価値を見出し、「フリーター君」編は爽やかなラストをむかえる。
しかし客観的には、「35歳で職歴・学歴なし」という彼の現実は変化していない…。
まとめ
自分はウシジマくんを「対岸の火事」として笑って楽しむことはできない。
自分もフリーターになっていた可能性はあるし、そうならなかったとしても営業の仕事で追い詰められたり、何のスキルもなく中年になって身動きがとれなくなってしまっていた可能性もある。
ウシジマくんの登場人物たちは「もしかすると自分が陥ったかもしれない境遇」を見せつけてくれる。
そうならなかったのは、ただ運が良かっただけ。
(流行りの言い方だと「親ガチャに成功しただけ」)
単にラッキーと手放しに喜ぶことができない鬱屈した性格の自分は、格差社会の闇に怯える日々を過ごしている。
Source: 皮膚科医の日常と趣味とキャリア
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