免疫グロブリンに反応良好と予測される川崎病患者における、冠動脈瘤リスク因子は何か?

世間はコロナばかりなので、普段の小児診療を忘れてしまいそうです。
こういうときだからこそ、コロナ以外の疾患の勉強もしっかりしなければ、と思います。

というわけで、今回紹介するのは、久しぶりに川崎病の論文です。
小林スコアが4点の川崎病児の予後も意外と悪いかもしれないという報告です。

免疫グロブリンに反応良好と予測される川崎病児における冠動脈瘤のリスクファクター

久々にJP誌を読みました。
Risk Factors of Coronary Artery Aneurysms in Kawasaki Disease with a Low Risk of Intravenous Immunoglobulin Resistance: An Analysis of Post RAISE. J Pediatr. 2022 Jan;240:158-163.e4.

東京都立小児総合医療センターからの報告ですね。
さっそく読んでいきましょう。

イントロダクション

川崎病は、主に幼児に発症する原因不明の血管炎です。
最も重大な合併症である冠動脈瘤は、未治療の患者の約25%に発生します。
1980年代に導入された免疫グロブリン静注療法(IVIG)により、川崎病患者の冠動脈瘤の発生率は激減しました。
冠動脈瘤をさらに減らすための新たな治療戦略が、この20年間の川崎病研究の大きなトピックとなっています。

免疫グロブリン投与後、川崎病患者の10~20%で発熱が再発または持続します。
これをIVIG不応といいます。
IVIG不応と予測される患者を対象に、プレドニゾロン(RAISE試験)、メチルプレドニゾロンパルス、シクロスポリンによる一次治療の強化戦略が、無作為化比較試験で報告されています。

いっぽうで、Post RAISE試験ではIVIGに反応良好と予測される患者であっても、1632人のうち90人(5.5%)が冠動脈瘤を発生させ、16人(1.0%)では中・大瘤でした。
川崎病患者の大部分はIVIGに反応良好と予測されるので、さらなる冠動脈瘤減少のためには、IVIGに反応良好と予測される者の中で瘤を発生しえるさらなる特徴を見つける必要があります。

方法

Post RAISE試験を再解析します。
RAISE試験では、治療開始前にすでに冠動脈瘤があるケースは除外されていましたが、Post RAISE試験では治療開始前から冠動脈瘤があるケースも登録されています。
今回の研究では、Post RAISE試験の中の小林スコア5点未満でIVIGに反応良好と予測される症例を解析対象としました。

小林スコア5点未満ですので、対象者は主にIVIGとアスピリンによる治療を最初に受けています。

結果

川崎病患者2648人のうち、1757人(66%)がIVIGに反応良好と予測されました。
冠動脈転帰のデータが揃った1632人のうち、1512人は10日目までにIVIG療法を受けました。

10日目までにIVIG療法を受けた1512人のうち、1か月後に冠動脈瘤があったのは5.3%でした。
小林スコアが4点であった患者は、IVIG不応が21.1%で、1か月後の冠動脈瘤の発生率は9.2%でした。

小林スコアと冠動脈瘤の発生率

1か月後の冠動脈瘤と関連するリスク因子は、治療前の冠動脈瘤(オッズ比7.1、95%信頼区間4.1-12.2)、生後12か月未満(オッズ比2.3、95%信頼区間1.3-4.1)、IVIG不応(オッズ比2.6、95%信頼区間1.4-5.0)でした。

ディスカッション

我々の研究集団では、小林スコアが4点であった患者は、IVIG不応が21.1%で、1か月後の冠動脈瘤の発生率は9.2%でした。
今後、小林スコアが4点患者に対しても、ステロイド、シクロスポリン、またはインフリキシマブの臨床試験を実施する必要があります。

私の感想:小林スコア4点にどう向き合うか

冠動脈瘤が全体的に多いなあと感じました。
全国調査では発症1か月での冠動脈瘤は2.3%で、私の印象も大体3%くらいかなあと感じていましたので、小林スコア4点以下で5.5%も瘤ができたのは意外です。

患者背景を見ていても、偏りは感じられません。
今回の患者対象の1歳未満の割合は21.6%でしたが、全国調査でも1歳未満での発症は19%で見られますし。

不全型の割合に偏りがあるでしょうか。
今回の対象では不全型が29.2%で、全国調査だと不定型例と不全型を併せて21%程度です。
不全型は診断が遅れやすいので、冠動脈瘤のリスクにはなりやすいです。

治療前の冠動脈瘤が1か月後の冠動脈瘤のリスクとなるのは、当然といえば当然と思いました。
私はオリジナルRAISEでは除外されたように、治療前に冠動脈瘤があるケースに対してのステロイドはリスクが高いと思っています。
まあ、今回の研究は小林スコア4点以下を対象にしていますので、ステロイドの出番はありませんが。

小林スコア4点でも意外とリスクがあるというのは、実臨床でも感じます。

小林スコア:5点以上でガンマグロブリン不応と予測される(感度76%、特異度80%)

①治療開始日が第4病日以前:2点
②生後12か月以下:1点
③好中球比率80%以上:2点
④血小板30万以下:1点
⑤Na 133mmol/L以下:2点
⑥AST 100IU/L以上:2点
⑦CRP 10mg/dL以上:1点

4点に対しても何らかの強化療法を行くべきかは、確かに重要なテーマだと感じました。

Source: 笑顔が好き。

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