少し前にカルト宗教が話題になった。
カルトになんかハマるはずない…とほとんどの人が思うだろう。
しかし新興宗教の手口は驚くほど巧みなのだという。
旧2ちゃんねるで絶賛されていた小説「ガダラの豚」。
その中に新興宗教にのめりこんだ女性を救出するというエピソードが出てくる。
今回は小説の中で紹介されている新興宗教の手口について書いてみる。
新興宗教の手口
新興宗教の手口の基本は洗脳。
たいていの新興宗教は洗脳のための合宿研修のシステムを持っているそうだ。
合宿という逃げられない状況の中で行われるのはマインドトレーニングである。
「内面に目を向け、偏見や我執を取り除くためのトレーニング」と称しているが、本当の目的は信者の自我を叩き潰すこと。
一人が円座の中に立たされ、囲んでいるまわりの人間は、立っている人物の外見から受ける印象を何でもいいから述べなければならない。
それは自然と悪口になる。
これを何度も続けるうちにプライドも自我も打ち砕かれて、すがるものが何一つなくなったところで、唯一の救いの手である神が示される。
それを受け入れると、信者全員が涙を流して自分を抱きしめ祝福してくれる。
空白になった頭に、苦しみの代わりにカタルシスが与えられるのである。
こうなると人間は驚くほど弱いのだという。
さらに重要なポイントは睡眠と疲労。
合宿中にとれる睡眠はごくわずか。
そのため睡眠不足と疲労で、脳の中が空白になってくる。
そこに絶えず同じ情報を流し続けると、一定の思考がノーチェックで流し込まれるのである。
このようなプロセスを経れば、「カルトになんてハマるはずがない」と思っていた人間も簡単に洗脳されてしまうだろう。
さらにこのような手法が用いられているのはカルトだけではない点にも注目する必要がある。
ハイパー病院というカルト
さまざまな場面でカルトまがいの手法が実践されている。
内科医medtoolz先生によると、これは初期臨床研修にも通じるところがあるそうだ。
カルトのセミナーは以下のようなプロセスを経る。
・ターゲットがいかに無力で価値のない人間であったかを、”討論”や”グループワーク”といった方法で自覚させる
・軽い”修行”でターゲットも組織の役に立つことを示し、カタルシスを与え褒め称える
・”修行”を積んだ人間による奇跡を見せ、自分も将来こうなれることを納得させる
一方、臨床研修も以下のようなプロセスを経る。
・病棟デビュー直後、まったく患者の役に立たない自分にショックを受ける
・患者が亡くなったり、心肺蘇生に参加させてもらえたりする体験は強く感情を揺さぶられる
・1年上の上級生が末梢点滴を簡単に入れるのも、新入生から見れば立派な”奇跡体験”である
自分の過去を思い起こしてみると確かに思い当たるところがある。
自分が6年かけて学んできたことが何の役にも立たないことに対するショック。
これはカルトのマインドトレーニングでプライドを打ち砕かる過程とそっくりである。
さらに寝る暇もない過酷な生活によって脳の中が空白になり、マインドコントロールを受け入れやすい精神状態も出来あがっている。
そこに上級医の奇跡(知識や手技)が示され、それにすがってしまう。
まとめ
ハイパー病院の研修医がカルトっぽいのも納得である。
実際、「すばらしい研修!」という言葉が並ぶ聖〇加病院の研修医インタビューなどを読むと空恐ろしくなってしまう。
このようにカルトの手法が応用されているケースは案外多いのかもしれない。
まあ、そんな人たちがブラックな医療現場を支えていることも事実ではあるんだけど。
クリスマスが近い。
しかし特に予定もなく、家でTwitter見ながらダラダラ過ごすつもりである。
ところで最近「若者殺しの時代」という本を読んでいると、クリスマスについて書かれた部分があった。
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Source: 皮膚科医の日常と趣味とキャリア
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