自治体に抗議した女性:「そうですね、急に襲われるということも恐ろしいけどね。番犬、だいたい番犬。山に近い所にお住まいの方って、番犬飼っておけば犬が騒ぐと分かるじゃない」
なぜ、クマは犬を怖がるのか。今泉さんにその理由をたずねると、「正確には、怖がるというより、避けたがっている。かつて里山に暮らしていた野良犬の記憶が残っているのでしょうね」と返ってきた。
「クマが野良犬の縄張りに入った場合、犬は追い出そうと立ち向かってきます。どんな犬も単独ではクマにかないませんが、2~3頭以上の群れをなして集団で攻撃してくる。これがなかなか厄介なのです」
野良犬たちの戦術は、こうだ。まず1頭が、クマと正面から向かい合う。そして他の仲間はクマの後方に陣取り、隙を見て後ろから足にかみつく。アキレスけんを切れば獲物の動きが止まることを、本能的に知っているからだ。そして怒ったクマが後ろの犬を攻撃しようとすると、今度は最初に正面にいた犬が、再び後ろから足にかみつく……。
クマはあっちを向いたりこっちを向いたり、犬たちにかく乱されるというわけだ。もちろんクマが本気で突進すれば、包囲網は抜けられる。しかし、多少なりともケガをするリスクがある以上、犬との接触を事前に避けようとするのは、当然の反応だろう。
では、飼い犬と一緒に歩いていればクマを撃退できるのかというと、そう簡単ではないようだ。
今泉さんは「近年のクマは犬が厄介な動物であることを忘れつつある」と、警告する。
日本では、1950年に制定された狂犬病予防法のもと、野良犬の駆除が進められてきた。今泉さんによると、10年ほど前にほぼすべての野良犬が姿を消したといい、その結果、犬に襲われた経験のないクマや、母グマから犬を避けるよう教わっていない子グマが増えているというのだ。
ここ最近、犬の散歩中にクマに襲われる事件が頻発している背景には、このような“犬を知らないクマ”の存在があると、今泉さんは分析している。
「『人ともちがう、なにか見慣れない生き物が来たな』と関心を持たれてしまい、犬の存在がクマを引き寄せている可能性があります。また、鉢合わせた際に犬が激しく吠えると、クマが興奮して突進してくることも考えられる。犬を連れていることで、むしろクマの被害に遭うリスクが高くなる恐れがあるのです」
今泉さんによると、最近のクマは犬だけでなく、もはや人のことも怖がらなくなりつつあるという。人が山に捨てる残飯の味を覚えたことで、クマよけの鈴の音を聞くと、エサを期待して逆に寄ってくるケースが指摘されているのだ。
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Source: 身体軸ラボ シーズン2
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