この7月に行われた参議院選挙は,ある程度予想されていたことではありますが,与党の過半数割れという結果に終わりました.
しかも衝撃的なことに,政権与党が70年ぶりに衆議院でも参議院でも少数与党になってしまい,政権がレイムダック化してしまう可能性さえ出ています.
与党の議席数の激減に対して,今回躍進したのが国民民主党と参政党です.
国民民主党の評価が伸びたのはある程度予想されていたことですが,たった1議席しかなかった新興政党である参政党が躍進して14議席もの票を獲得したことに,日本のみならず世界中で驚きの声が上がっています.
日本人ファーストというキャッチフレーズなど,過激ともいえる主張を掲げたこの党に対しては,選挙で予想外に票を伸ばしていた最中からマスメディアがこぞって取り上げ出し,海外のメディアも極右政党の誕生か?というような表現を使って報道していました.
この政党に票を投じた世代は,自民党の支持率が高い我々中高年とは真逆の多くは20代から30代の若い世代で,特にSNS戦略が奏効して彼等の心をつかんだということのようです.
なぜ若者たちが,過激ともいえる政策を掲げている参政党に票を投じたのか?
自分たちが高齢者になってもいつまでもそのポストや既得権益にしがみついて私利私欲にばかり走り,都合の悪いことは隠蔽し,およそ庶民感覚とはかけ離れた感覚しか持ち合わせず,そして大票田である高齢者や利権団体にばかり忖度する政治家たち.
かつて世界第二位の経済大国だったころの面影は見る影もなく,国際競争力も発信力も外交力もどんどん低下,経済的,軍事的に威嚇されても遺憾砲しか打てない情けなさ.
長きにわたるデフレと急激な少子高齢化で,税金や社会保険料ばかりが増えて実質賃金は全く上がらず,貧困家庭が増え,格差が固定してしまい,国や自分の将来に全く希望を持てず,先進国の中でもダントツで自殺者が多いという悲惨な現状.
こんな今の日本の現状にほとほと嫌気がさしている上に,最近急激に流入する外国人による不動産の買い占めや犯罪の増加を目にするたびに(統計学的な事実は別として)その気持ちが増幅されていったのです.
与党にとって都合の悪いのは投票率が上がって高齢者などの岩盤支持層が脅かされることなのですが,今回ばかりはSNSを通じて政治が身近になり,若者が政治参加することで投票率が上がり,国民民主党や参政党に投票して与党を過半数割れに追い込んだということです.
先の兵庫県知事選挙でもそうでしたが,最近はSNS戦略が強力な武器となって選挙結果にとてつもなく大きな影響をもたらすようになりました.
しかし反面,コロナ禍の時の反ワクチン派のように,自分にとって都合の良い情報ばかりにアクセスするため客観的な判断が困難になる上,誤情報や扇動的な情報でさえもあっという間に拡散してしまうという悪しき一面も露呈されました.
このことを大手マスメディア(最近は皮肉っぽくオールドメディアなどと言われるようですが)はこぞって批判していましたが,彼等の最近の報道姿勢を見ていると,彼等とて本当に偏見も持たず客観性や中立性を保って報道していると自信を持っていえるでしょうか?甚だ疑問です.
今回の選挙中も,案の定どの選挙特番でも露骨にこの党の躍進に危機感を煽ってバッシングするような報道姿勢が目立ちました.
ある民法番組では,普段は穏やかな印象の男性MCが,参政党の党首に対してだけは他の党に比較して明らかに威圧的,批判的な態度で色をなして同じ質問をしつこく繰り返していて,揚げ足を取ったり失言を狙っているのがありありで,中立であるはずのメディアの姿勢とは遥かにかけ離れている状況に嫌気がさしました(案の定その直後にこの司会者に対する批判がXで盛り上がっており,これがSNSの怖いところではあるのですが)
また他の番組では,専門家と称するあるコメンテーターが,こう述べていました.
若い人たちは近現代史とか国際情勢に関する知識もなく,ただSNSで入ってきた耳触りのいい,自分たちにとって都合のいい情報だけを鵜呑みにして,客観的な判断も出来ずにこの党に投票したのであろう,非常に危険である,と.
私は参政党の支持者でもなんでもありませんが,このコメントに対してはものすごく違和感を覚えました.
では我々他の世代は誰しも,候補者の政策や人となりをきちんと吟味して投票していると言えるでしょうか?
地元の大物政治家の2世だから,高速道路を作ってくれたり新幹線の駅を誘致してくれるからということで投票したり,なんとなく自民党政権が続いてきて自分は特にそれほど困っていないから自民党とか,創価学会の会員だから公約内容をよく知らなくても公明党に決めているとか,友人に頼まれたからとか,学校の先輩後輩だからという理由だけで特定の候補者に投票していないでしょうか?
有名で発信力のある有名人やタレントや芸能人だからといって人気投票していないでしょうか?
老人ホームなどの施設に入って外出困難な超高齢者の人たちにも期日前投票の機会が与えられますが,その中には判断能力の低下した認知症の人たちも多いはずです.批判を承知で言えば,その人たちも大切な一票を担えるのでしょうか?
もちろん,第一次世界大戦の直後,多額の負債と敗戦国としての屈辱に苦しむ国民の気持ちを掬い取るかのようにして現れたのがヒトラーですし,移民政策に苦しむ欧州諸国で極右政党がどんどん当確を現しているのは不気味です.
米国の大統領選挙でのトランプ大統領の誕生も,アメリカファーストの掛け声に共感した岩盤支持層(MAGA)が支えた結果です.
参政党を極右と考えるどうかは別として,今の世界を見れば,このような政党が得票数を伸ばす背景は,日本とて例外ではないということでしょう.
もちろんこの党が今後どうなるか,熱しやすく冷めやすい日本人のことですから,いっときの熱狂で終わってしまうかもしれませんし,それは今後の状況を見なければ分かりません.
しかしどういう形であれ,若い人たちが政治というものを自分ごととして考えらようになり投票に行った,そして,その原動力が世の中を動かすことを実感できたということ事態は進歩だと思います.
ただ,問題はこれからです.
政治経済,外交安全保障,少子高齢化,社会保障,全てにおいて待ったなしの状態になっている我が国を立て直すべく,どの国会議員も当選に浮かれることなく,どのような政治活動を行ってくれるのか,我々国民一人一人が厳しく監視していかなければならないでしょうし,もし期待を裏切るような結果になれば審判を下す,それこそが専制国家とは一線を画した民主国家の矜持であることは論を待たないでしょう.
我々国民一人一人もメディアリテラシーを高めて,玉石混交の情報を自分なりに咀嚼する必要があると思いますし,そういう意味では日頃からの勉強を怠らず少しでも自分の基礎知識の裾野を広げておく必要があると思います.
そして何よりマスメディアに切望したいことは,自分たちの主義主張に合わないからというだけで,悪意を持って露骨な偏向報道をしたり,些細な言動を切り取って仰々しく騒いだり,三面記事的なスキャンダルばかりを追ったりせず,何よりもジャーナリズムの原点に立ち返り,大局的な視野に立って、真実を公平に伝える姿勢を貫いてほしいということです.
![]()
医師 ブログランキングへ
Source: Dr.OHKADO’s Blog

コメント