SARS-CoV-2のRNAのヒトへの伝播様式としては、感染者との濃厚接触、汚染された表面への接触、ウイルス感染者の呼吸器系から放出された飛沫の吸入などが報告されている。しかし、SARS-CoV-2が空気を介してさらに拡散する可能性があるかどうかは分かっていない。
今回、Ke Lanたちは、2020年2~3月にCOVID-19(SARS-CoV-2感染症)患者を治療する政府指定病院の院内と周辺地域にエアロゾルトラップを設置した。病院は、重症患者のための3級甲等医院(Aクラスの三次病院)と軽症患者のための野戦病院(競技場を転用したもの)の2か所で、換気のなされた患者病棟でのSARS-CoV-2のRNAの濃度は、非常に低いのが通例だった。その理由として、Lanたちは、隔離が効果的に行われていることと十分な換気が行われていることを挙げている。換気が行われていない患者用トイレでは、空気中のウイルスRNAの濃度が高く、特に濃度が高かったのは、医療スタッフが防護具を脱ぐための区域だった。このことは、防護具を脱ぐ際にウイルスを含んだエアロゾルが空気中に再浮遊する可能性のあることを示唆している。これに対して、消毒作業の厳密性と頻度を高めたところ、医療スタッフ区域では、空気中のSARS-CoV-2のRNAに関する検出可能な証拠は見つからなかった。
病院外の公共区域(居住用建物、スーパーマーケットなど)におけるSARS-CoV-2のRNAの濃度は低いのが通例だった。これに対して、大勢の人が行き来する2つの区域(いずれかの病院の近くにある屋外空間など)では、CoV-2のRNAの濃度が高くなっており、Lanたちは、このように人が密集する区域にいたSARS-CoV-2感染者が、ウイルスを含んだエアロゾルの生成に関与したと考えられるという見方を示している。
Source: 身体軸ラボ シーズン2
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