食事療法の迷走[9]食品交換表 第5版で大きく転換

健康法

食品交換表 第5版

1993年には,食品交換表 第5版が発行されました.

食品交換表 第5版(1993)
(C) 日本糖尿病学会

この第5版は,それまでの第1~第4版とは内容がガラリと変わりました.

名称を変更

まず 名称が変更されました.
それまでは

『医師・栄養士・患者にすぐ役だつ 糖尿病治療のための食品交換表』

でしたが,第5版では

『糖尿病食事療法のための食品交換表』

となりました.

対象は患者

この変更の理由は,食品交換表の対象が変更されたからです.

それまでの食品交換表は,『医師・栄養士・患者』のためのもの,つまり治療する医療側と治療される患者側,双方を対象にしていたのに対して,第5版からは 対象は患者だけ[]とされました.

第5版が患者向けであることは,これらの文章からも明確です.

糖尿病を正しく治療し,健康を保っていくためには,主治医の指示通りに適正な食事療法を毎日実行し生涯続けなければいけません

1.糖尿病の治療について(第5版 p.1)

毎日の食事療法を指示通りに正しく行うのは患者さん自身です.その大きな助けになるのがこの「食品交換表」です.

5.食事療法のすすめ方(第5版 p.5 )

[★]では医療側はどうなったのかと言えば ,その5年後の1998年に,【「食品交換表」を用いる糖尿病食事療法指導のてびき】が発行されています.

(C) 日本糖尿病学会

食事療法として位置づけ

また,第5版では,

食品交換表が糖尿病の唯一正しい食事療法であり,しかもこれは糖尿病に限らず,すべての人の正しい食事である

これが随所で強調されています.

糖尿病食は万人に適用する健康食
糖尿病食は健康食なのです

2.糖尿病の食事療法について(第5版 p.2)

つまり 食品交換表に従っていない食事は不健康であり,糖尿病でなくてもすべての人は食品交換表に従うべきであるという考えはこの第5版から始まったのです.昨年 日本糖尿病学会が発行した「糖尿病診療ガイドライン2019」で,糖尿病患者の食事療法は個別化されるべきである,と表明しましたが,食品交換表 第5版(そしてそれ以降も)で打ち出した立場は,それとは正反対だったのです.

基礎食+付加食の廃止

第5版の以上の考えからすれば,必然的にそうなるでしょうが,第4版まで書かれていた基礎食(最低限の必須栄養素を摂る)+付加食(患者の好みで自由に摂る)は,完全に廃止されています.糖尿病の食事療法において,患者の自由度はありえないものになったのです.第4版から第5版になって,正反対のスタンスになりました.

それまでの食品交換表が必ず示していた 基礎食+付加食という考えを否定し,『カロリー・栄養素構成のすべては医師が指示するので,患者はそれをそのまま一生守らなければいけない』

どうしてこんなに急転換したのでしょうか?

次回はそれを分析します.

[10]に続く

Source: しらねのぞるばの暴言ブログ

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