このシリーズの締めくくりです. 本記事は Ahlqvizt博士の画期的な新説について,しらねのぞるばによる勝手な感想ですから,真に受けないでください.
壊れたら直します
エンジニアリング技術者ならよくご存じですが,工場の生産設備や,送電設備・橋梁・鉄道などの重要インフラでは,『予防メンテナンス』という考えが大原則です.
『壊れたら すぐに修理します』というのはエンジニアリングとしては下の下です.家電製品ならそれでよくても,人の命にかかわるような設備・機器では絶対に許されません.
『故障したら直す』のはメンテナンスではなくて,単なる修理です. 『故障しない状態を常に保つ』のがメンテナンスです.
鉄道の保線作業が典型ですね.列車が脱線してからでは遅いのです.
私も理系の端くれなので,糖尿病にも『予防メンテナンス』の考えが必要と思っています.
『糖質制限はしないでください.炭水化物60%で仮に糖尿病が悪くなっても,今はいい薬があるのですから』というのは,
『橋が傷んでるって? 大丈夫です.橋が落ちたら すぐに架け替えますから,安心して渡ってください』と同じでしょう.
自分が境界型と正規軍の その中間 ちょうど境界線の上に立っていると気づいてから10年たちました. その間に心がけてきたのは,この予防メンテナンスの考えです. 現状維持で十分だと思っています.実はそれが一番難しいのですが.
2型糖尿病は存在しない
2型糖尿病というものは存在していないと思います,あるのは 共通点は高血糖症状というだけの 異なる4種類の病気です.
とすれば それぞれに最適の食事療法,最適の運動療法,最適の投薬療法もまた4種あるでしょう.
Ahlqvist博士も新分類を見出したからそれでよしとしているのではありません.
最も重要なことは,このようにまったく違う病気なのだから,それぞれに先手の打てる治療法を確立すべきだと訴えているのです.
ただし 現時点では Ahlqvist博士は,4つの2型糖尿病 それぞれについて,具体的な『最適の治療』は述べていません. それは この分類の観点で実際に比較臨床試験を行った例がなく,実証データが存在しないからです[★].多分腹案はあるのでしょうが,科学者はデータのないことについては,不用意なことは言いません.
[★]ただ Dennis博士の報告は,結果として,SIRDが投薬によっていかに転帰が変わるかを実証している 貴重な実例です.このことはAhlqvist博士も最新の論文で述べています.
しらねのぞるば の提案
そこで,不肖『暴論上等』のしらねのぞるばが,Ahlqvist博士になり代わって提案してみましょう(おお,カッコいい).
SIDDの最適治療
発症初期からインスリン分泌が圧倒的に少なく,そのため 血糖コントロールの悪化も急速に進行します. GAD抗体(GADA)は陰性ですが,それ外は1型となんら変わらない病態です.
とすれば,たとえHbA1cがまだ穏やかなレベルであっても,最初からインスリンを使った方がいいと思います.初期から使えば,極少量のインスリンで済むはずですし,血糖コントロール良好の期間を長く保てるはずです. 悪化してからインスリンを使い始めたのでは,単位数も大きくなりますから,過大なインスリンによる低血糖,肥満などインスリンの副作用から逃れられません.
SIRDの最適治療
SIRDはもっともリスクが高いです. その理由は, 発症時点では 血糖値もHbA1cも 4種の中では 一番優秀だからです. したがって主治医も患者も楽観してしまい,それが災いして手遅れになりやすい. 一見 良好な血糖コントロールが保たれているとみえても,空腹時インスリン(IRI)が異様に高いのであれば,直ちにメトホルミン,SGLT2阻害薬,チアゾリジンなど あらゆる手段を総動員して,強力かつ早急にインスリン抵抗性を解消させることが必要でしょう.
MODの最適治療
断食でも,筋トレでも,ランニングでも,ウォーキングでも,手段は何でもいいですから,とにかく肥満解消が第一で,投薬はその後でしょう. MODは肥満から脱却できれば,それだけで あっさりと『治る』のです. たしかに肥満脱却はつらいでしょうが,『糖尿病が治った』『糖尿病を自力で治した』というのは,このパターンです.
MARDの最適治療
ある意味で もっとも難しいのはこのMARDかもしれません.たしかに 症状としてはもっとも穏やかな糖尿病で,特段 どれかの合併症のリスクが高いわけではありません. ただし『特徴がないことが唯一の特徴』なので,逆に具体的に何に的を絞ればいいのか不明です.
MARDとは名前の通り(AgeーRelated)加齢性なのだから,解決法はただ一つ『若返る』しかないと思います.といってもエステに通ったり美容整形で外観をごまかすのではなくて,本当に若返る,つまり他人から『実際の年齢よりすごく若く見えますね』と言われるようなライフスタイルをみつけて実践するしかないのでしょう.
2型糖尿病は存在しない【完】
Source: しらねのぞるばの暴言ブログ
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