クリニックの今後を考える上で参考になるのが流通業界だという。
流通業界で発達したのはコンビニと宅配サービス(アマゾン)である。
前回の記事ではコンビニについて考えた。
今回は宅配サービスについて。
医療の宅配サービス
医療の宅配サービスと聞いてイメージするのは訪問診療。
しかし現在、訪問診療は病院へ受診ができない患者に限られており、一般の人は受けられない。
ホリエモンは著書で訪問診療の拡大を希望している。
現在、訪問診療が保険適応されるのは寝たきりの患者に限られる。法整備をして保険適応できる訪問医療制度を作ればいいのにと思ってしまう。
大規模にやれば24時間対応のコールセンターも作れるし、いろいろな科を統合的に揃えることができる。
そうすれば深夜でも待たずに治療を受けることだって可能だろう。
しかし国の政策として訪問診療の規制緩和の可能性は低いと思う。
代わりに政府は遠隔診療の普及は積極的に進めている。そこに薬の宅配サービスが組み合わさっていく可能性が高い。
インターネット薬局とは?
アメリカではすでに薬の宅配サービス(インターネット薬局)が盛んになってきているという。
1995年には8600万件(全処方の4%)の処方薬が宅配されていたが、2010年には2億6400万件(全体の7%)となり、年々市場規模を拡大している。
電子処方箋がクリニックからインターネット薬局へ送られ、宅急便で薬が配達される。
薬剤師からの服薬指導は電話で行われるそうだ。
しかし薬の到着までに数日かかるため慢性疾患が中心となっている。
ここにアマゾンが参入しつつあり、薬の即日発送を目論んでいるらしい。
米アマゾン・ドット・コムは、オンライン薬局を運営する新興企業ピルパックを買収することで同社と合意した。アマゾンはこの買収を通じてヘルスケア分野に参入するとともに、全国的な医薬品ネットワークを手に入れる。
ただ日本では、現時点では宅配便で処方薬を送ってもらうことはできない(院外処方)。
診察は遠隔でも可能になったが、薬を受け取るためには対面での服薬指導が必要だからである。
遠隔診療+薬の宅配サービス
遠隔診療後、患者は処方箋を郵送してもらい、薬局で服薬指導を受け直接薬を受け取る必要がある。
▼現行のオンライン診療▼
(自宅へ薬を宅配する場合は薬剤師が直接自宅へ出向き、服薬指導を行わなければならない。)
そのためシステムの利便性は悪い。
しかし電子処方箋やオンライン服薬指導など着々と制度が整いつつある。
厚生労働省が医薬品医療機器法(薬機法)を改正する方針を固めた。来年の通常国会に法案提出し、早ければ2020年春の実施を目指す。
医師によるオンライン診療は既に一部始まっており、今回の法改正により薬剤師の「オンライン服薬指導」も認めることで、患者は診察から服薬までを在宅で一貫して受けられるようになる。
近々、自宅でオンライン診療を受け、薬も宅配してもらうことが可能になるようだ。
▼今後のオンライン診療▼
現在の法律では、オンライン診療は定期受診しているクリニックでしか受けられないため、開業医の利権も一応守られている。
まとめ
利便性の高いコンビニエンスクリニックと、オンライン診療+薬の宅配サービスは普及してくる可能性が高そうだ。
しかしそこで儲けるのは開業医ではなく、インフラを作った企業。
開業医は手数料を支払って、オンライン診療や宅配サービスのインフラを使わせてもらうという形になる。
現在オンライン診療のサービスを提供している会社がいくつかあるようだが、今後さらに増えてくるだろう。
診療の予約と診察のためのビデオ通信、診療費のオンラインでの支払いや処方箋の配送支援まで含まれたサービスが展開されています。
現在、MRT社の「ポケットドクター」、メドレー社の「クリニクス」、情報医療社の「クロン」、インテグリティヘルスケア社の「ヤードック」などのサービスが約2000の医療機関に導入されています。
その分余計な出費がかさみ、クリニックの利益を押し下げてしまうことになる。
このあたりの未来予測を踏まえながらクリニック開業の戦略を練っていく必要がありそうだ。
つづく
>>皮膚科でオンライン診療は可能なのかを考えた
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Source: 皮膚科医の日常と趣味とキャリア
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