マンガ「風の谷のナウシカ」がよくわからなかった人のための解説 ジブリレビュー⑮(前編)

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ジブリレビュー⑮は「風の谷のナウシカ」。

ナウシカには原作のマンガ(全7巻)があり、映画は2巻までのストーリーで作られている。

 

  • 1巻:1983年7月
  • 2巻:1983年8月
  • 映画:1984年3月
  • 3巻:1984年12月
  • 4巻:1987年
  • 5巻:1991年
  • 6巻:1993年
  • 7巻:1995年

 

2巻発売時に映画が制作され、その後も連載は続き約10年かけて完結した超大作である。

そのためナウシカを語るためにはマンガ版に言及する必要がある。

しかしこのマンガ版は極めて難解で、初見ではよくわからなかった。

 

そこで今回は映画版とマンガ版の風の谷のナウシカを比較し、マンガを理解するために必要な知識をまとめてみた。

風の谷のナウシカ 全7巻箱入りセット「トルメキア戦役バージョン」 風の谷のナウシカ 全7巻箱入りセット「トルメキア戦役バージョン」

 

▼前回の記事▼

【宮崎駿の逆襲】「風立ちぬ」をファウスト伝説から考察する ジブリレビュー⑬
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映画版とマンガ版の違い

 

映画の風の谷のナウシカはSFファンタジー。

文明が滅亡した1000年後、毒を産生する森・腐海に覆われた世界を描く。

ナウシカのあらすじ

今でこそ新鮮味はないが、これが35年近く前に作られたと考えると前衛的な作品である。

毒を産生する有害な腐海が、実は汚染された大地を浄化するために生まれたというストーリー。

行き過ぎた文明に警鐘を鳴らし、環境保護を訴えるわかりやすいメッセージ性がある。

 

一方マンガ版は「読みにくいな…」という印象で、ストーリーが全然頭に入ってこない。

これは宮崎駿の「今までにないマンガを描く」という狙いによるものらしい。

コマをななめ読みするとちょうどいいいまのマンガと違い、ひとコマひとコマを読むのにひっかかります。ひとコマの情報量が多いために、ある意味では読みにくいマンガになっています。

しかし、この異様な世界が宮崎さんの最初からのねらいだったのです。

ジブリの教科書1 風の谷のナウシカ (文春ジブリ文庫)

 

そのため内容を理解するためには時間をかけて何度熟読する必要がある。

そこで分かるのは、マンガ版は「環境問題を描いた作品ではない」ということである。

 

まず映画とマンガの大まかなストーリーを比較してみる。

 

映画版とマンガ版のストーリー比較

 

映画版はトルメキアと辺境の小国ペジテとの戦争。

中間地点の風の谷で両者が激突し、ナウシカ達は巻き込まれる。

映画ナウシカの解説図

 

一方マンガ版の戦いはトルメキアvs土鬼。

映画では登場しなかったもう一つの国家・土鬼との戦争が描かれている。

トルメキアの同盟国である風の谷は、トルメキア軍と協力し土鬼軍と戦う。

ナウシカの映画とマンガの違いの図

ナウシカマンガ版の解説図

映画よりだいぶスケールが大きく、話も複雑である。

この違いを把握しておかないと、ナウシカたちが何をやっているのかが全くわからない。

 

▼映画とマンガの舞台の比較▼

風の谷のナウシカの地図

 

またトルメキア、土鬼両国に内部抗争があり、政治劇も繰り広げられる。

そしてナウシカを理解するためにはこの「政治劇の背景」と「ニーチェの哲学」の2つを知る必要がある。

 

ナウシカを理解するために必要な知識

  • 政治劇の背景
  • ニーチェの哲学

 

今回はまず政治劇の背景について解説する。

 

政治劇の解説

 

トルメキア、土鬼のそれぞれの内情について。

 

トルメキアの内情

クシャナはトルメキア帝国皇帝の4人の子供の末っ子。

トラメキア皇帝ヴ王と3人の兄はクシャナの知略を疎ましく思っている。

風の谷のナウシカの相関図

(ヴ王や兄王は序盤では登場しないため、最初はクシャナの立場がわかりにくい)

 

土鬼との全面戦争に際し、ヴ王は別働部隊を編成しクシャナを隊長に任命する。

風の谷を始めとする辺境諸国と協力し、腐海を南下して土鬼軍を挟み撃ちにする作戦である。

自分は作戦の概要が理解できていなかったので、序盤から???となってしまった。

 

▼本隊とクシャナの別働隊の進路▼

風の谷のナウシカのネタバレの図

 

そしてこの作戦には、目障りなクシャナを前線から離れた辺境の地に追いやり、さらにクシャナを抹殺する目的もあった。

クシャナの進路は土鬼にリークされており、土鬼軍に待ち伏せされた部隊はほぼ全滅してしまう(2巻)。

 

しかしクシャナはそのまま作戦を続行し前線に到達。本隊と合流した。

 

そこで能力を遺憾なく発揮し、劣勢であった本隊を立てなおし勝利する(3巻)。

クシャナの図

 

その後クシャナはクーデターを起こし、自分を裏切った兄たちに復讐するつもりだった。

しかしこの敗北に焦った土鬼の皇帝ミラルパは、危険な兵器を投入することを決意し、状況は大きく変化する。

 

土鬼の内情

土鬼の皇帝は皇兄ナムリスと皇弟ミラルパの兄弟で、超能力を持つ弟ミラルパが統治権を持つ。

兄ナムリスに実権はなく、支配権の奪取を目論んでいた。

土鬼の相関図

(ナムリスは5巻になって突然登場するため、立ち位置や目的がわかりにくい。)

 

クシャナ軍の勝利に焦ったミラルパは、腐海の植物を利用した生物兵器を用いようとする(4巻)。

 

しかし腐海の植物が暴走し土鬼国土は汚染され、両軍は混乱に陥る。

これに乗じてナムリスがミラルパを暗殺(5巻)。

ラスボス感満載のナムリスは、ジブリでは珍しいカリスマ性のある悪役(他にはムスカくらいか)。

クシャナとの政略結婚を図り「土鬼トルメキア二重帝国」の設立を目論む。

 

しかしナウシカの妨害、巨神兵の暴走、クシャナたちの反乱によって失敗。

ナムリスは死亡する(6巻)。

 

ほとんど土鬼の自滅という形で戦争は決着。

ナウシカは新たな戦争の火種となりうる「1000年前の技術」を封印するため、土鬼の聖都へ向かう。

またトルメキアのヴ王も技術を狙い聖都へ向かっていた。

 

ラスボスであるはずのナムリスが途中で退場してしまい、ここから7巻に向けてストーリーはさらに難解になっていく。

次回はナウシカとニーチェの哲学について解説する。

後編へつづく

 

▼ジブリレビューのまとめはこちら▼

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Source: 皮膚科医の日常と趣味とキャリア

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