[運動療法] 筋トレか有酸素か[2完]

健康法

前回記事では 有酸素運動であれ,筋トレ(レジスタンス運動)であれ,どちらでもHbA1cを下げる効果があるという結論でした.
信頼性に乏しい研究・バイアスのかかった研究を徹底して排除する Cochrane Review のメタ解析結果ですから,これが現時点の最良の答えでしょう.

ただしこのレビューは 運動をするか/しないかという Yes/Noの研究,すなわち [筋トレをするか/しないか] 又は [有酸素運動をするか/しないか] という組み合わせでの比較でした. つまり,[筋トレ vs.有酸素運動]という直接対決の論文を対象とはしていませんでした.

どちらが有効か

では,有酸素運動と筋トレとを直接対決で比較した研究はないのでしょうか. いいえ,実に膨大な論文があります. ただしその結論はまったく一致していません. 『筋トレの方が有効』『有酸素運動の方が有効』『どちらでも同じ』などです. ですから,この中から自分に都合のいい論文だけをとりあげて『既に結論は出ている. これで決まり』ともっともらしく解説するネット情報などもありますが,1つや2つの論文に『こう書いてあった』だけではどうとでも言えてしまいます.

したがって,Cochrane Reviewと同様に,有酸素運動と筋トレとを比較した研究を 普遍的なルールに従って系統的に収集し,バイアスを排除して信頼性の高いものだけを評価する(=システマティックレビュー)必要があります.

それを行った論文がこれです.

Yang 2014

タイトルもズバリ,『2型糖尿病に対するレジスタンス運動有酸素運動の比較:システマティックレビュー及びメタ解析』です.2型糖尿病の運動療法として,どちらがより適切で好結果に結びつくのかを検証したものです.

方法は以下の通りでした.

対象論文の収集と選定

  • (1) 医学論文データベース(PubMed/EMBASE/Cochrane/CINAHL/SPORTDiscus)から,2013年3月までに発表されていた『レジスタンス運動と有酸素運動との比較』論文 2,988本を収集[★]
  • (2) 重複発表,RCT(ランダム比較試験)でないもの,2型糖尿病を対象としていないもの等 2,944本を除外
  • (3) 残った44本の論文から厳密性に欠けるもの等を除去

[★] 論文収集にあたり,実際に使用したデータベースアクセス手順も Supplement で詳細に開示されています. 特にPubMedの検索スクリプトの構成法は,非常に参考になります.

以上の手順で17本の論文を選定しました.きちんと比較した論文というものは意外に少ないのですね.

そしてここから更にバイアスを排除して絞り込んでいます.これもCochrane方式に準拠して厳密に行っています.

Study Appraisal and Synthesis Methods
The assessment of study quality was based on the Cochrane Risk of Bias tool. For effectiveness measures, differences (resistance group minus aerobic group) in the changes from baseline with the two exercises were combined, using a random effects model wherever possible.
 
研究の評価と統合の方法
研究の質の評価は、Cochrane Risk of Bias tool に基づいて行われた。効果測定については、可能な限りランダム効果モデル を用いて、2つの運動によるベースラインからの変化の差(レジスタンス群-有酸素運動群)を統合した。

Yang 2014

結果の評価

以上の手順で評価した結果,結局 下記 12件のランダム比較試験(対象者合計:626人)が メタ解析対象として残りました.(No.9のように1つの試験が複数の論文で報告されている場合もあるので合計 13報)

解析結果

メタ解析結果はこの通りでした.有酸素運動とレジスタンス運動(筋トレ)とで,HbA1c低下にはどちらが有利なのかを解析した結果です.プロットの右方向が有酸素運動が有利】,左方向が【レジスタンス運動が有利】です.

最下段が総合判定ですが,ご覧の通り,有酸素運動がやや有利という結果でした. ただし,たしかに有意差はありますが,圧倒的大差というほどではありません.やはり前回のCochrane Review と同様,運動であればどちらでも良さそうです.

むしろ前回記事のCochrane Reviewにもこう述べられているように;

The easier the exercise is to maintain, the more likely it is that people will do it. Therefore, mild to moderate exercise performed regularly will be of more benefit, than short bursts of high intensity exercise, which would be difficult to maintain over long periods.
 
運動は、継続しやすいものであればあるほど、実行しやすくなります。ですから、長時間続けるのが難しい高強度の運動を短時間で行うよりも、軽度から中程度の運動を定期的に行う方がより効果的なのです.

統計的には大差ないのですから,『自分が無理なく継続して行える運動がベスト』なのです. 怪しげなご託宣に惑わされないようにしましょう.

コロナですっかり頻度が下がりましたが,私はもっぱら山登りが運動です.登山は 有酸素運動と筋トレとが同時にできる全身運動です.しかも標高差とルートの選択次第で,負荷は軽くも重くも自由に設定できるからです.

(C) FR02TSU さん

筋トレか有酸素か【完】

Source: しらねのぞるばの暴言ブログ

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