第66回日本糖尿病学会の感想[13] イメグリミンが効く人/効かない人

健康法

【この記事は 第66回 日本糖尿病学会年次学術集会を聴講した しらねのぞるばの 手元メモを基にした感想です. 聞きまちがい/見まちがいによる不正確な点があるかもしれませんが,ご容赦願います】

イメグリミン(商品名:ツイミーグ)を発売している住友ファーマ株式会社からは,イメグリミンの臨床試験データを基にした事後解析(post-hoc analysis)が多数報告されました.

事後(post-hoc)解析とは

文字通りを訳すと『後付け』ということになります.
イメグリミンの薬効評価試験実施により集積されたデータを,いろいろな観点で抽出して,解析・検討したものです. したがって何か新しいデータが得られたというわけではありません.

イメグリミンが効く人/効かない人

糖尿病薬に限らずどんな薬でも,よく効く人と効かない人という個人差はどうしても存在します.イメグリミンの臨床試験においても,投与後すぐに反応してHbA1cがスルスルと下がっていった人と,なかなか下がらず 試験評価期間の最後になっても あまり下がらなかった人とがいました.では,この差は何が支配しているのか,という報告が多数行われました.

イメグリミンが効く人をレスポンダー(Responder),あまり効かなかった人をノンレスポンダー(Non-Responder)として,この人達の違いは何なのかを分析したものです.

ただし,レスポンダーというグループと,ノンレスポンダーのグループとに はっきりと二分されたわけではありません.

この図は 発表のスライドそのものではなく,手書きスケッチしたイメージです

ごらんの通り,HbA1c低下度合は広く分布していたのですが, 最終時点でHbA1cが7%未満になった人をレスポンダー,それ以外をノンレスポンダーと,便宜上 二分したにすぎません.

この報告は;

3-133-2 イメグリミン単剤療法による血糖降下作用:時系列クラスター分析を用いた反応軌跡の解析

イメグリミン 1,000mg×2回/日の単剤投与試験の結果を解析したものですが,レスポンダー群,即ち 最終的に良好なHbA1c低下が見られた群と,そうではなかったノンレスポンダー群(とは言え,投与前に比べれば HbA1cは有意差を持って低下しています)とでは,最終結果のみならず.途中経過もかなり異なっていたという報告でした.

そして,別のこの報告では;

3-134-1 イメグリミン単剤治療に対するEarly Respondersの解析:日本人2型糖尿病患者を対象とした臨床試験データの事後解析

同じくイメグリミン 1,000mg×2回/日の単剤投与試験の事後解析ですが,最終的にレスポンダーとなる人は,投与開始後4週時点で,既にHbA1cが0.3%以上低下しており,これがよい予測因子になったと報告されました.

この投与開始後すぐにHbA1cの低下が目に見えて下がった人をアーリーレスポンダー(Early Responder)群とすると,アーリーレスポンダーの特徴は,投与後HbA1cの低下と良く対応して体重が低下していった人たちでした.

この理由については不明です. ただ別途行われたこの報告によると;

3-133-1 イメグリミン単剤療法によるHOMA-βに対する影響:日本人2型糖尿病患者を対象としたイメグリミン臨床試験の事後解析

同じくイメグリミン 1,000mg×2回/日の単剤投与試験の事後解析において,全体としてHOMA-β(=インスリン分泌能の指標)は投与後に増加していったのですが,その増加は レスポンダー群とノンレスポンダー群に有意差がなかったという報告です. つまりノンレスポンダー群では,イメグリミン投与によりHOMA-βは増加したのに,それがHbA1cの大きな低下には結びつかなかったようです.やはり この差が生ずる原因は不明です.

また,この報告では;

3-135-2 イメグリミン治療に対する治療応答,治療失敗の時間分析:日本人2型糖尿病患者を対象としたイメグリミン単剤療法試験の事後解析

『治療失敗』を,投与前からHbA1cが0.5%以上上昇(=悪化),または副作用などによる投与中止,低血糖の発現などと定義した場合,その発生率が報告されました.

治療失敗のハザード比は,プラセボより有意に低かったと報告しています. ただし治療失敗の人達の特徴は(おそらく数が少なすぎて)分析されませんでした.

[続く]

Source: しらねのぞるばの暴言ブログ

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