国家百年の大計

内科医

 今年も残すところあとわずかとなってしまいました.

 今秋以降,すでに通常の風邪のように常態化してしまったコロナ感染に加え,全国的なインフルエンザの流行や風邪等の呼吸器感染症の増加が拍車をかけているせいか,クリニックの患者数は昨年にもましてさらに増加,毎日クリニック前の廊下に,中に入り切れない患者さんが何人も並んでいる状態です.
 あまりの多忙さで,滅多に風邪をひかない私も先日は咽喉をやられてしまい,患者さんたちから逆に心配される始末でした.

 12月16日の土曜日はクリニックの忘年会を元町の中華料理店で行い,楽しいひと時を過ごしました.
目がまわるほど忙しくても,いつも抜群のチームワークと笑顔で対応してくれている「チームおおかど」のスタッフには本当に感謝しかありません.
 その翌日は合気道の最終稽古と忘年会でした.
 職業や年齢に関係なく,ただ合気道が大好きという共通の趣味で集まった気の合う仲間たちといつものように気持ちのよい汗を流し,馴染みのイタリアンバルを借り切って盛り上がりました.
日頃はどうしても医療関係者との付き合いが多い私にとって,彼等との交流は狭隘になりがちな視野を広げてくれる大切な存在でもあります.

 さて,失われた30年間の経済停滞のせいで,今や7人に1人の子供が相対的貧困状態であるという,とても先進国とは思えないような悲惨な状態になってしまった我が国,日常診療でもそのことをひしひしと感じます.

 受診した患者さんに必要な検査や治療を提案すると,「この検査や薬はいくらかかるんですか?」と訊いてくるのは,そして場合によっては支払い額を理由に断ってくるのは,たいがい学生さんや若い人たちです.
 将来のある彼らにこそきちんとした医療を受けてほしいのに,支払いのことを気にして必要な検査や治療をためらっているわけです.

 確かに高齢者と違い3割負担の人が多いということもあるでしょう,それでも以前は若者たちからこんな言葉を聞くことはありませんでした.
 保険診療ではルールとして自己負担分を値引きするわけにもいきませんので,私にできることといえば証明書のような自費の部分を少しでも応援価格にしてあげることくらいで,忸怩たる想いです.

 本当にこの国は,いったいどうしてこんなことになってしまったのか?ひとえにこの国の政府の無策に尽きるのではないでしょうか?

 誰がみてもただの選挙対策のためとしか思えないその場しのぎの愚策ばかりを繰り出すかと思えば,官僚の書いた原稿をただ棒読みするだけ,「差し控えさせていただきます」とか「記憶にありません」とか国民を愚弄したような答弁しか出来ない,そして
いつまでもその地位にしがみつき,私腹を肥やすことにしか興味のない政治家たちに,これからの日本を支えていく若い人たちを大切にせずして国の未来はあり得ないのだということが本当にわかっているのか?はなはだ疑問と言わざるを得ません.

 今年のOECDの国際的な学習到達度調査(PISA)では,日本の15歳の成績はコロナ前よりすべての分野で成績は向上し,世界トップレベルになったとのこと,また文化芸術やスポーツの分野でも多くの若者が世界的に活躍しているのを見ていると,決して恵まれた環境とは言えない中でも今の若い人たちはよく頑張っていると思います.

 そんな彼等の若いエネルギーを決して無駄にせず,国家の活力の起爆剤として十分に活かすこと,それこそが没落の一途を辿りつつあるこの国の復活への大事な処方箋なのではないでしょうか?

 若い人たちが家庭環境や経済状態で苦しむことなく,十分な教育の機会を与えられ,幸せな家庭を築いたり,子を産み育てたり,好きな仕事が出来たり,自分の夢を追うことができること,そし何よりも国の未来に希望を抱くことができること,そんな社会を作ることこそが,まさに国家百年の大計だと思います.

 来年こそ,今の閉塞した日本の社会に,少しでも明るい兆しが見えますように.


医師 ブログランキングへ

Source: Dr.OHKADO’s Blog

コメント

タイトルとURLをコピーしました