韓国は、法治国家ならぬ情治国家だといわれる。国民感情の高ぶりに、しばしば司法判断まで左右されるからである。
反日が絡むと余計に始末が悪い。2013年出版の『帝国の慰安婦』を巡る裁判がその一例だろう。慰安婦問題で「日本軍による強制連行」を強調するのは実態と異なると論じた学術書だが、元慰安婦らへの名誉毀損(きそん)にあたるとして著者が刑事告訴され、在宅起訴された。
1審は無罪だった。その後に文在寅政権が誕生して反日世論が高まると、2審は逆転有罪となる。文政権は、慰安婦問題で「不可逆的解決」をうたった日韓合意も事実上破棄した。
なるほど情治である。だが、慰安婦問題をめぐる混乱の責任は、日本側にもある。
発端は朝日新聞などが昭和57年以降に報じた、韓国・済州島で戦時中に朝鮮人女性を軍命令で「狩り出した」とする吉田清治氏の虚言だ。
この虚言が「証言」に祭り上げられ、事実無根の強制連行説が広まった。
もっとも日韓関係が急速に悪化するのは平成4年1月、宮沢喜一首相(当時)が訪韓した時からである。
これも朝日の記事がきっかけだった。訪韓直前、日本軍が慰安所設置などに関与したことを示す資料が見つかったと、1面トップで報じたのだ。
強制連行とは無関係の資料だったが、朝日は「謝罪して補償すべきだ」と主張した。この記事を韓国メディアがこぞって取り上げ、「日帝の蛮行」などと書き立てた。たちまち反日デモが巻き起こる中、訪韓した宮沢首相は首脳会談などで何度も謝罪し、翌年には悪名高き河野談話(「心からお詫(わ)びと反省」を表明した河野洋平官房長官談話)が発表された。
韓国ではそれまで、慰安婦といえば朝鮮戦争などで韓国軍や米軍の相手をさせられた女性たちのことだった。しかし宮沢首相の訪韓後は日本軍相手の女性たちを示すようになる。
朝日は26年、吉田証言を虚偽と認めて謝罪し、証言に関する16本の記事を取り消した。これらの記事が最初からなければ、日韓関係はだいぶ違ったものだっただろう。
昨年10月、韓国最高裁は『帝国の慰安婦』の有罪判決を破棄してソウル高裁に差し戻し、同高裁が今年4月、ようやく無罪判決を言い渡した。
史実に基づかぬ報道で、日韓関係を悪化させてはならない。
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Source: 身体軸ラボ シーズン2
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