紡がれる命

内科医

 7月も後半,今年も毎日記録的な猛暑が続いています.

 さて,6月半ばに,母と共にホームに入居していた父親が逝去しました.94歳の誕生日を迎える直前でした.

 重症の誤嚥性肺炎に罹患して1週間ほど入院,何とか一命を取り留め退院はしましたが,超高齢でもありやはり全身状態の悪化は避けられませんでした.死の3日ほど前にホームに訪問,衰弱して喀痰排出が困難だったため気管内吸引をして聴診器を当てたあと,「また来るからな」という私に,絞り出すよう声で「頼むわな」と言った父のすっかり痩せ細ってしまった手を握ったのが最後でした.
 数々の人の死を看取ってきた私にとっても肉親の死は初めてでしたが,いずれ遅かれ早かれこんな日が来ることは予想していただけに,特に涙も出ず,家族誰しもが冷静に受け止められました.

 通夜と葬儀は,父親の遺言通り,家族葬で行いました.

 9人兄弟の末っ子として姫路に生まれ,銀行員として真面目に働き,母と共に私と弟を育ててくれました.退職してからは高齢者大学に入学したり,玄人はだしともいえる趣味の絵画や国内外への旅行で母と共に余生を楽しんでいました.
 何よりも子供や孫やひ孫が皆元気に幸せに生活していること,活躍していることが自分にとって何よりも幸せなこと,そして人に自慢できることなのだというのが父の口癖でした.
 頑固なところもありましたが,陰になり日向になり物心両面で支えてくれた人でもありました.

 そして,7月の初旬には次女が2人目の子供を出産しました.今回は逆子だったため,予定日を早めての帝王切開となり,周囲をやきもきさせましたが,無事元気な男の子が産まれました.

 次女は女性ばかりの家族の中で育ったこともあり,男の子2人で家の中はきっとカオスになると思うと言っていますが(笑),お兄ちゃん同様,すくすくと天真爛漫に,そして何よりも心身ともに逞しく育ってくれることを祈ります.

 残念ながら彼の曽祖父は新しいひ孫に出会うことなく逝ってしまいましたが,きっとあの世で喜んでくれていると思います.

 この2ヶ月は奇しくも,父の死,そして孫の誕生と,昭和から令和へと脈々と紡がれていく命を実感する日々となりました.


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Source: Dr.OHKADO’s Blog

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