現在、世の中にはたくさんの診療ガイドラインが存在する。
皮膚疾患のガイドラインも次々にリリースされている。
最近はガイドラインがたくさんリリースされている。
治療の参考にできる情報が増えるのはよいことだが、多すぎてとてもカバーしきれない。
しかしガイドラインは専門医試験でも出題されるので、把握しておく必要がある。
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我々はこれらのガイドラインとどう付き合っていけばよいのか。
今回はガイドラインの使い方について。。
ガイドラインで医者はバカになったのか?
「ガイドラインで医者はバカになった」という過激な意見がある。
昔のほうがはるかによかったんですよ。
小賢しい考えでガイドラインとかを作ったりとか何かするけど、医者をどんどんバカにしてしまったと。
visual dermatology 17: 36, 2018
マニュアルに沿って診療するだけで、自分の頭で考えなくなってしまった、と。
専門医試験とガイドラインが専門医のレベルを下げてますよ。
すべて公式のようになってるんですよね。ある症状を見たら、X+Y=Zみたいに、公式を当てはめればいいというような。
visual dermatology 17: 36, 2018
しかし皮膚科のガイドラインは若干事情が異なっている。
EBMに基づくガイドラインでは、システマティック・レビューがないと高い推奨度は得られない。
皮膚疾患のようなマイナーな病気はC1(行うことを考慮しても良い)ばかりになってしまう。
(最近はエビデンスレベルと推奨度が分けられるようになった→推奨度1、エビデンスレベルCなど)
そのため、やるべきことがはっきりと示されているわけではなく、あくまでもエビデンス集として参考になる程度である。
実際、ガイドラインは診療上の参考資料の一つという声もある。
診療ガイドラインというのは、これに沿ってやりましょうということではないのです。
診療上の参考の資料の一つです。
臨床研究論文のエビデンスはどうなってるんだろうなと思ったときに、自分で検索するのは大変ではないですか。それを代わりにやってくれるのが診療ガイドラインなのです。
visual dermatology 17: 4, 2018
自分もエビデンスを集めた資料として読んでいる。
このようにガイドラインとの付き合い方や考え方は人それぞれである。
自分がこれまでで一番感銘を受けたのは、研修医のときに読んだmedtoolz先生のガイドラインに対する考え方だった。
ガイドラインの賢い使いかた
例えば、肺炎のガイドラインでは第3世代セフェムとキノロンとの併用が推奨の一つである。
これらを使えば大抵の菌をカバーできる。
肺炎治療のガイドラインに出てくる抗生物質の使いかた、第3世代セフェムにキノロンをかぶせるやりかたをした時点で、あらゆる菌は死ぬ。
感染症を疑うが原因が特定できない。しかしすぐに抗菌薬を開始したい。
そんなとき病名を「肺炎」とつければ、ガイドラインに従って広域の抗菌薬を「正しく」使用できるようになるのだという。
これをmedtoolz先生は「正しい誤診のノウハウ」と呼んでいる。
正しい誤診のノウハウ
発熱して具合の悪い患者さんがいて、とにかく速く抗生物質を使いたい状況があったとき、その人をとりあえず肺炎と「誤診」しておくと、あらゆる細菌を殺せるような抗生物質が「正しく」利用できるようになる。
抗菌薬の適正使用からは大きく外れるし、感染症の先生方からはお叱りを受けるだろうが、これが賢いガイドラインの使い方だと感じた。
病名を「肺炎疑い」とつけたその時点で、だから感染症を診断する必要はなくなる。全部治るから。
「ガイドラインは役に立たない」とか「ガイドラインで医者がバカになった」とかいう議論をしていること自体がバカで、手持ちの武器をいかに有効に使うかを考えるのが一流の臨床家なのではないか。
「正しい誤診のノウハウ」がmedtoolz先生のブログで一番衝撃を受けた内容かもしれない。
くだらない議論をしてないで、自分がどう動くかを考えたい。
▼medtoolz先生についてのまとめはこちら▼
研修医になったばかりの頃、臨床現場の理想と現実のギャップに苦しんだ。
学生の時に勉強することと、実際の医療で必要とされることはまったく異なっている。
「患者さんのために」とか「患者さんの話をよく聞きましょう」とか…
Source: 皮膚科医の日常と趣味とキャリア
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