腸には メトホルミン[7]

健康法

Study 2:血糖値低下効果に差があるか

従来のメトホルミンとはまったく異なる吸収特性を持つ,【遅放性メトホルミン 】 を試作して,これを 健常者20人を対象に,市販品である【速効性メトホルミン】【徐放性メトホルミン】と比較投与したところ,

遅放性メトホルミンは,従来品の半分ほどしか血中に移行しない. つまり,肝臓に送り届けられたメトホルミンは半分になることが確かめられました.

「肝臓における糖新生抑制がメトホルミンの主作用である」という従来の説によれば,この遅放性メトホルミンの血糖値抑制効果は小さいはずです. そこで 糖尿病患者を対象として,血糖値低下効果がどれくらいなのかを調べました. これが Study2です.

試験対象者

糖尿病としては中程度の2型糖尿病患者240人に集まってもらいました. BMIが33くらいと,日本で言えば高度肥満者ですが,海外では糖尿病でなくてもこの年齢の成人のBMIはこれくらいなので,特に肥満者に限定したわけではありません.

全体を6グループに分けて,それぞれプラセボ(Placebo; 偽薬),遅放性メトホルミン 及び 徐放性メトホルミンを12週間にわたり服用してもらいました.

遅放性メトホルミンは,投与量を3段階に設定しています. この理由は1種類の投与量だけでは,他の(未知の)因子が支配して効果が出たのではないかという疑いを捨てきれません.しかし3種類の投与量で,その投与量に比例して効果が見られたのであれば,間違いなく薬の効果によるものと断定できるからです.

なお,上表にも注記したように,被験者として参加を決定した時点では,空腹時血糖値は 140くらいで揃えていたのですが,その後2週間以上 それまでの薬を休薬(WashOut)してもらったので,この間に当然血糖値が少し上昇しています. そしてその上昇程度は,人により異なるため,試験開始時点では,空腹血糖値は少しばらついています.

結果:血糖値低下効果

結果の一例は下記の通りです.

遅放性メトホルミンの空腹時血糖値低下効果は,従来品に劣るどころか,むしろ同用量(1000mg)で比べると,大きかったのです.

また試験前後での HbA1cの変化はこの通りです.

被験者全員は,この試験に参加するまでは メトホルミン 及び/又は DPP-4阻害剤を服用していた糖尿病患者なので,偽薬(Placebo)のグループが HbA1cが悪化したのは当然です. それ以外のグループは,HbA1cの変化に有意差はなしでした. 悪化も改善もしなかったということになります.

唯一,徐放性メトホルミンを2,000mg服用し続けたグループだけは,HbA1cが0.21%低下しましたが,表に注記したように このグループの試験前のメトホルミン服用量は,平均 1,438mgだったので,この試験に参加することで投薬強化した格好になっていますから,これは当然でしょう.

以上の結果から,この論文の著者は;

遅放性メトホルミンは,肝臓への到達量が従来品の半分なのに,血糖値低下効果は従来品と同等以上なのだから

Diabetes Care 2016;39;198-205

メトホルミンの作用部位は腸であって,全身循環ではない

ことが証明されたと主張しています.

[8]に続く

Source: しらねのぞるばの暴言ブログ

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