2020年3月から始まっている質問コーナー。
今回は3回目です。
インフルエンザ症例にゾフルーザを使用する予定です。
処方に当たり、患者の年齢ごとの注意点や、有効性・安全性に関する情報等を確認しておきたいので教えてください。
ゾフルーザを使用予定なのですね。
確かに、1回の内服でいい点は便利でしょうね。
今回は、ゾフルーザの注意点をまとめておきます。
結論:ゾフルーザは使わない
12歳未満には、ゾフルーザを使用しません。
そして、12歳以上にも私はゾフルーザを使用しません。
ゾフルーザは、体重20kg(通常は6歳)から投与可能です。
ですが、小児への使用経験に関する報告は少なく、安全だとはまだ言えません。
薬剤耐性ウイルスの出現が認められることも、使用を推奨できない理由です。
小児科学会も、12歳未満へのゾフルーザを使用しないよう提言しています。
参考:2019/2020 シーズンのインフルエンザ治療指針 ―2019/2020 シーズンの流行期を迎えるにあたり― 日本小児科学会 新興・再興感染症対策小委員会 予防接種・感染症対策委員会
12歳以上についても、薬剤耐性ウイルス問題は同じですので、私は処方しません。
もちろん、ゾフルーザにも期待されている点があります。
ゾフルーザに関する論文は、これが有名です。
Baloxavir Marboxil for Uncomplicated Influenza in Adults and Adolescents.(N Engl J Med. 2018; 379: 913-923.)
ゾフルーザに期待される点は、ウイルス量をタミフルより大幅に減らしたという点でしょう。
しかし私は、ウイルス減少による直接的な効果を確認できていないと認識しています。
ゾフルーザ内服でインフルエンザの流行が抑えられたという報告は聞きませんし、ゾフルーザを内服すれば早めに登校許可がおりるわけでもありません。
また、重症インフルエンザ感染症に対する併用という使い方にも、今後光が当たるかもしれません。
ノイラミニダーゼ阻害薬と併用し、耐性を抑えて、入院重症例あるいは新型インフルエンザ感染例での治療効果が期待される抗インフルエンザ薬である。
バロキサビル(ゾフルーザ)は季節性インフルエンザ治療に使うべきではない
小児科 61巻1号 Page83-87(2020.01)
他にも、「新薬」という言葉の響きが醸し出す、なんとなく良さげな雰囲気がありますね。
新製品、新年、新酒、なんとなくありがたい気持ちになれます。
患者様のニーズもありますね。
ただ、新しいということは、まだ分かっていないことがあるということです。
新興感染症、新型コロナウイルス、こういう「新」は嬉しくないでしょう。
新薬というのは、まだ分かっていない危険性があるかもしれないということです。
以上から、ゾフルーザは「とっておきの薬」という扱いでいいと思います。
使わないからこその「とっておきの薬」です。
私は、すでに20年以上の歴史があり、その副作用に対する知見も集まっているタミフルを使用します。
タミフル、リレンザ、イナビル、ラピアクタ
既存の抗インフルエンザ薬については、こちらの記事に書きました。
2001年にタミフルが日本でも販売され、そろそろ20周年となります。
この20年間に、たくさんのタミフルが日本で使用されましたが、日本のタミフル耐性ウイルスが諸外国より多いという話は聞きません。
抗菌薬の乱用が耐性菌を増やすことは有名ですが、少なくてもタミフルに関してはたくさん使っても耐性化は進まないのではないかと考えます。
したがって、抗インフルエンザ薬が必要であるなら、タミフルかリレンザを使用するのが基本です。
内服ができないほど衰弱しているケースでは、ラピアクタが使いやすいでしょう。
1日1回というメリットがどうしても欲しいなら、ゾフルーザではなくイナビルが良いでしょう。
まとめ
- ゾフルーザは「とっておきの薬」。使ってはいけない。
- 新薬は未知の副作用があることを忘れずに。
- 既存の抗インフルエンザ薬であらゆるケースに対応できる。
Source: 笑顔が好き。
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