データは雄弁
そもそも医師が「新型コロナウイルスに罹患した疑いがある」と診断し、PCR検査を実施する。
陽性となった場合、重症患者、軽症患者、無症状患者など症状の度合いに加え、基礎疾患の有無、高齢か否か、妊娠しているかどうかなどを判断しながら、府は入院、宿泊療養、自宅療養と、患者を割り振っていく。
PCR検査の結果は、夜遅い時間に出ることも珍しくない。入院や宿泊療養が決まった患者でも、行き先の調整がつかないケースもある。大阪府は、こうした患者を「入院調整中」と呼び、人数を広報している。
具体的な数字を見てみよう。府に依頼し、入院調整中、宿泊療養、自宅療養のデータを示してもらった。
データによると、入院調整中の患者数が最大となったのは4月27日で148人。この時、自宅療養患者は332人で、宿泊療養患者は135人だった。
これが4月30日になると、入院調整中の患者数は79人に激減する。患者の割り振りが順調に進んだことが分かる。その結果、自宅療養患者は224人と減少し、宿泊療養患者は180人に増えた。
ちなみに5月29日現在では、入院調整中の患者数は1人。自宅療養患者は8人で、宿泊療養患者は23人という具合だ。
「大村知事が指摘された『自宅待機が200人発生した』のは、こうした割り振りのプロセスで生じた患者数を誤解されたのではないでしょうか。本当に入院が必要で、感染力の高い患者さんに自宅待機をお願いしていたわけではありません。入院調整中の患者さんが148人に達した時でも、普通の病床は余力がありました。重症用の病床では、医師や看護師などのスタッフは人数がぎりぎりとなり、配置が大きな鍵になったこともありましたが、ベッド数自体は余力を残していました」(同・茂松会長)
重症者用の病床数と使用率も、府に数字を出してもらった。重症患者が最大になったのは4月21日の65人で、この時重症用の病床は122床を確保していた。使用率は53・3%となる。
それが4月30日になると、重症者は64人。病床の確保数は170床と増加し、使用率は37・6%にまで下落した。
5月29日現在で重症患者の数は18人。病床は188床が確保されており、使用率は9・6%となっている。
具体的な数字を見ると、やはり大阪府の推移を「医療崩壊があった」と指摘するのは無理があると言わざるを得ない。ファクトチェックを行ってみると、大村知事ではなく吉村知事に軍配が上がるようだ。
大村知事も、愛知県民の危機感を持たせようと、ことさらに東京や大阪の現状を大げさに表現したきらいもある。
いずれにせよ、日本の政治史で、今ほど都道府県知事に注目が集まったことはない。大村知事と吉村知事の舌戦がエスカレートした背景の1つではないだろうか。
週刊新潮WEB取材班
Source: 身体軸ラボ シーズン2
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