長崎大学大学院熱帯医学・グローバルヘルス研究科の北潔教授の研究チームが、マラリアの薬を開発するために使っていた「ある物質」が新型コロナウイルスの増殖も抑えることを発見しました。
それが「5-ALA」、天然のアミノ酸の一種です。
長崎大学大学院熱帯医学・グローバルヘルス研究科 北潔 教授
「この中に本当に大切なものが入っていて、これが多くの人を新型コロナから予防したり救ったりできる。できるだけ早く実現したいと思っています」
「5-ALA」は「生命の根源物質」といわれ、私たち人間の細胞内でも作られています。
安全性が非常に高く、10年以上前から医薬品をはじめ健康食品や化粧品などにも使われています。
「5-ALA」は8つ集まると「プロトポルフィリンIX」という物質になります。
これが鉄と結合すると「ヘム」になります。
ヘムが新型コロナウイルスの表面にある「スパイクたんぱく質」に結合すると、ウイルスが細胞に侵入できないため、体内でウイルスが増殖するのを防ぐことができるというわけなんです。長崎大学大学院熱帯医学・グローバルヘルス研究科 北潔 教授
「試験管の中ではもう完全にある一定の濃度以上では100%増殖を抑えるんです。その再現性も非常に良くて何度試験をしても(抑える)」
ワクチンの開発は海外でも進んでいます。
しかし、投与した直後にアレルギーの症状が出た事例の報告もあり、安全性などに課題が残っています。
一方、「5-ALA」は私たちの体内にあるアミノ酸の一種で、副作用の心配はほとんどなく、安全性の高さはすでに科学的に証明されています。
室温で長期間保存でき、低価格で安定した供給も可能です。
さらに、ウイルスの変異にも対応できるといいます。
長崎大大学院 北潔教授
「もともと私たちがマラリアの薬として開発中の5-ALAですね、アミノレブリン酸が効くのではないかと思いまして、まず試験管の中で試してみたら、間違いなく、完全にゼロにする。増殖を。それでこれを、ぜひ人の治療、予防に使いたいということで、現在研究を進めています」「感染」とはウイルスの表面にあるスパイクタンパクと細胞の表面にあるACE2という受容体が結合し、ウイルス内の核酸が細胞の中に侵入することです。
「5-ALA」を投与するとPP9という化合物が作られます。このPP9がスパイクタンパクに付くことで、細胞表面の受容体と結合することを妨げ、感染を抑える効果が確認されました。
長崎大大学院・北潔教授:「スパイクタンパクという、とげとげがウイルスの周りに突起が出ていますね。ウイルスはあれを使って細胞を狙って、入っていくが、5-ALAが体の中に入ると、最終的にヘムというものを作る。そのスパイクタンパクにこのヘムとかその前駆体が結合するという証拠があった。ですから実際にそこに結合して、細胞への侵入を阻害すると」
北潔教授:「この5-ALAの特徴は、われわれ自身が持っているアミノ酸。だから、非常に安全」
次のステップは臨床研究。軽症患者らに実際に投与して、症状が改善されるかなどを分析します。
北潔教授:「臨床研究は、ちゃんとヒトで、効果があるということを示すという。どれくらいの量が必要なのかとか、そういう細かなデータをこれからきっちりとっていく必要があるので、歯がゆいが、一つ一つをやって皆さんに期待にきっちりと応えられるようにしていきたい」
袋井発のアミノ酸「5-ALA」。世界でまん延している新型コロナの治療薬となる可能性を秘めています。
田中徹さん:
「本当に新型コロナを撲滅するにはちゃんと物が作れないといけない。それは相当の数が必要。もしこのアミノレブリン酸が本当に効くよということが証明されて、供給しようと思えば、この工場で、しっかり作れる体制があるから、大きな夢のある仕事だと思っている。」
製薬会社ネオファーマジャパンの袋井工場(袋井市久能)で製造しているアミノ酸「5-アミノレブリン酸(5-ALA)」に、新型コロナウイルス増殖の抑制効果があることが24日までに、先進的な感染症研究で知られる長崎大(長崎市)の基礎研究で確認された。新型コロナの新たな治療法確立につながることが期待されるとし、同大が臨床研究に乗り出した。袋井の技術がコロナ対策に一役買う可能性が出てきた。<メモ>5-アミノレブリン酸(5-ALA) 日本酒や納豆などの発酵食品に多く含まれているアミノ酸。ミトコンドリアが、活動に必要なエネルギーを作り出すために不可欠な物質で、36億年前の地球上の生命誕生にも関わっていたと考えられることから“生命の根源物質”とも呼ばれる。長崎大は国内外でも有数の感染症研究拠点として評価されていて、5-ALAを活用し、マラリアの治療薬開発や、ミトコンドリア糖尿病の臨床研究などにも取り組んでいる。
Source: 身体軸ラボ シーズン2
コメント