HOMA-R式のメリット・デメリット
精度はかなり劣るものの,1回の採血で患者の インスリン抵抗性を推定できる HOMA-R式は,使い勝手のいいものです.
しかし,以下のような問題もあります.
HOMA-R式は,クランプ試験などの実測値データから数値解析したHOMAを,さらに近似的に算出できるようにしたものですから,HOMAのインスリン抵抗値そのものではありません.
ネットの解説や書物では,HOMA-R式がインスリン抵抗値そのものであるかのように書いてあるのをみかけますが,それは間違いです.
又 HOMA-R式は適用範囲が狭く,空腹時血糖値が140より高い人は,HOMAとのズレが大きくなります.
更に 元の HOMAチャートにしても.
できるだけクランプ試験結果に近くなるように計算したものですが,数値シミュレーションである以上,クランプ試験と完全に一致するわけではありません.
更に このHOMAが提案された時代は,まだコンピュータの能力が低くて,計算量を減らすために厳密な数値解を一部簡略化していました.
HOMA2の登場
このような HOMA(及び その簡易計算式である HOMA-R)の問題点を改善すべく,HOMA2が提案されました.
これはその後のコンピュータ計算能力向上を受けて,数値解析精度を飛躍的に高めたものです. 従来のHOMAに対して,こちらはHOMA2と呼ばれます(区別の都合上,以下 従来のHOMAをHOMA1と呼びます).
なお,Ahlqvist博士が,『糖尿病の新分類』を発表したクラスター分析では,解析用の変数に このHOMA2を用いていました.
HOMA2の精度が高まったことは,このチャートを見れば明らかです.
HOMA1では,おおまかな直線や単純な双曲線カーブで表されていた インスリン感受性(%S)や膵臓β機能(%B)は,複雑な曲線になっています.
HOMA1とHOMA2とで,どれくらい変わったかは,2つのチャートを重ねてみるとわかります.適用可能範囲も広がりました.
★の空腹時血糖値=140,空腹時インスリン=23の人は,HOMA1ではインスリン抵抗性が8.0(=インスリン感受性12.5%の逆数)でしたが,HOMA2では4.0(同25%)になっています.
しかもHOMA2の複雑な曲線は,もはや従来のHOMA-R式のような簡易推算式では近似できません.
その代わりに,空腹時の血糖値/インスリン値を入力すると,HOMA2を示してくれる HOMA2 Calculatorが用意されています.
日本では まだほとんど使われていませんが,欧米文献では HOMAと言えば,このHOMA2が使われることが多くなったようです.
ご自分の空腹時血糖値/インスリン値が分かる方は,従来の荒い近似のHOMA1ではなく,またさらにそれを簡略化したHOMA-R計算式でもなく,このHOMA2を判定のツールにすることをお勧めします.
[8]に続く
Source: しらねのぞるばの暴言ブログ
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