新型コロナウイルスの予防接種。ポリエチレングリコールのアレルギーとは?

新型コロナウイルスの予防接種。
私も来週には接種します。

世界的には2021年2月末時点で1億4千万人以上の人が接種されています。

多くの人が新型コロナウイルスの予防接種を受けるにつれ、アレルギーのリスクについても分かってきました。
日本アレルギー学会が、「新型コロナウイルスワクチン接種にともなう重度の過敏症(アナフィラキシー等)の管理・診断・治療」をまとめてくださいました。

これを読む前も、そして読んだ後にも感じるのは「ポリエチレングリコールのアレルギーって?」という疑問です。

今回は、新型コロナウイルスの予防接種とポリエチレングリコールのアレルギーについて書きます。

新型コロナウイルスの予防接種におけるアナフィラキシーの頻度

詳しくは、上記のリンク先を読んでください!
ということなんですけど、自分用に要点をまとめさせてください。

2021年1月27日時点で、ファイザー社製のワクチンは9943247回接種で50例のアナフィラキシーが起きました。
その頻度は、100万回中の5回です。

モデルナ社製のワクチンは7581429回接種で21例のアナフィラキシーが起きました。
その頻度は100万回中の2.8回です。

一般的なワクチンのアナフィラキシー頻度は100万回中1.3回ということですから、それよりは高い頻度と言えます。

注意:相対リスクではなく絶対リスクで考えるべき

稀な事象については、相対リスクではなく絶対リスクで考えたほうがいいです。
ファイザー社製ワクチンは、一般のワクチンよりも、5÷1.3=3.8倍キケン!と考えるのは正しい解釈だとは思いません。
0.000005%-0.0000013%=0.0000037%キケンと考えるのが正しい解釈だと私は思います。
そもそも予防接種でアナフィラキシーを起こす頻度は極めて稀ですから、万が一の対策をしっかりしたうえで、積極的に接種すべきだと私は考えます。

参考:「今さら聞けない医学統計の基本」の「相対リスクと絶対リスク」

難しいことはさておき、アナフィラキシーが起きる確率は0.000005%ということだけを知っておけば大丈夫です!

新型コロナウイルスの予防接種を受けられない人

新型コロナウイルスワクチンに限らず、予防接種には「接種不適当者」が定められています。
接種不適当者とは、「予防接種のリスクが高いために、接種を受けられない人」という意味です。
新型コロナウイルスワクチンの接種不適当者は以下です。

  1. 明らかな発熱を呈している者
  2. 重篤な急性疾患にかかっていることが明らかな者
  3. 本剤の成分に対し、重度の過敏症の既往歴のある者
  4. 上記に掲げる者のほか、予防接種を行うことが不適当な状態にある者

124はまとめて「体調が良くない人」と考えていいでしょう。
慌てず、体調が良くなってから予防接種すればいいわけです。

問題は3ですね。
重度の過敏症というのは、アナフィラキシーのことと考えて良いと思います。

シンプルなのは、新型コロナウイルスの1回目の予防接種でアナフィラキシーを起こした場合でしょう。
この場合、2回目は「接種不適当者」になります。

複雑なのが、ワクチンの「成分」という表記です。
この成分で重要とされているのが、「ポリエチレングリコール」「ポリソルベート」です。

ポリエチレングリコールとポリソルベート

「ポリエチレングリコールやポリソルベートのアレルギーはありませんか?」

こんな質問をしたところで、多くの人が「いえ、分かりません」としか答えられないのではないでしょうか。

ポリエチレングリコールと聞いて私がピンとくるのは、モビコールという下剤です。
2歳以上の便秘に効果が高く、この薬が大好きな小児科の先生は多いと思います。
(私も、この薬のおかげで、頑固な便秘症の子どもを救える機会が増えました)

大腸内視鏡を受ける前に飲むニフレックも、ポリエチレングリコールです。
2Lのお水で溶かして、2時間で飲み切るという恐怖の薬です。

ニフレックにはアナフィラキシーの報告(日本消化器病学会雑誌2019; 116: 330-335.)があります。
とにかく、大腸内視鏡を受けたときに、下剤でアナフィラキシーを起こした経験があれば、必ず申告してください。

注意:正しくリスクを判断する

注意して欲しいのは、「大腸内視鏡を受けたことがないからポリエチレングリコールアレルギーなのかも……」と思う必要はないということです。
リスクとなるのは「下剤でアナフィラキシーを起こした経験」であって、「下剤を飲んだことがない」ではありません。

ポリソルベートは、乳化剤としてさまざまな製品に使われています。
私が持っているビオレuにもポリソルベートは入ってました。
抗アレルギー薬として知られるモンテルカスト錠(キプレスやシングレア)や、フェキソフェナジン、ロラタジン、オロパタジンなど、多くの抗アレルギー薬にポリソルベートは含まれています。

もちろん乳化剤なので、マヨネーズやチョコレート、マーガリン、化粧品にも使われています。

ポリソルベートアレルギーを評価するときに、私が重要だと思っているのは「原因不明のアナフィラキシー」「注射薬のアレルギー」ではないかなと思っています。
「原因不明のアナフィラキシー」や「注射薬での薬剤アレルギー」がある場合は、必ず予防接種前に申告してください。

注意:メーカーによって薬の成分が違う

たとえばインフルエンザワクチンは、ポリソルベートが入っているものと入ってないものがあります。
第一三共さんのインフルエンザワクチンには使われていました。
ポリソルベートが入っているかどうかを知るためには、薬品の正確な情報が必要になります。

新型コロナウイルスの予防接種に注意が必要な人

新型コロナウイルスワクチンの接種要注意者は以下です。
接種要注意者は新型コロナウイルスの予防接種を受けることはできますが、接種後に30分以上健康観察する必要があります。

  1. 抗凝固療法を受けている者、血小板減少症又は凝固障害を有する者
  2. 過去に免疫不全の診断がなされている者及び近親者に先天性免疫不全症の者がいる者
  3. 心臓血管系疾患、腎臓疾患、肝臓疾患、血液疾患、発育障害等の基礎疾患を有する者
  4. 予防接種で接種後 2 日以内に発熱のみられた者及び全身性発疹等のアレルギーを疑う症状を呈したことがある者
  5. 過去に痙攣の既往のある者
  6. 本剤の成分に対して、アレルギーを呈するおそれのある者

上記のうち、アレルギーに関連するのは6です。
「本剤の成分に対し、重度の過敏症の既往歴のある者」は接種不適当者で、「本剤の成分に対して、アレルギーを呈するおそれのある者」は接種要注意者となります。

こうして並べてみると分かりますが、接種不適当者と接種要注意者は連続した概念であり、境界が不明瞭なところがあります。
予防接種を担当する医師は総合的に判断します。

アナフィラキシー対策を十分とれば、リスクは最小限に

どれだけポリエチレングリコールやポリソルベートに注意しても、一定の確率でアナフィラキシーは起きます。
大切なのはアナフィラキシーに十分備えることです。

  • 皮膚・粘膜症状(注射部位以外の蕁麻疹、皮膚の発赤・紅潮、眼瞼腫脹など)
  • 気道・呼吸器症状(喉頭閉塞感、呼吸困難、喘鳴、強い咳嗽、低酸素血症状)
  • 強い消化器症状(腹部疝痛、嘔吐、下痢)
  • 循環器症状(血圧低下、意識障害)

上記の4項目のうち、2項目以上あればアナフィラキシーです。
速やかにアドレナリンを筋注します。

この対策が十分とれれば、予防接種のリスクは最小限になります。

まとめ

  • 新型コロナウイルスの予防接種でアナフィラキシーが起きる確率は0.000005%程度。
  • 大腸内視鏡を受けたときに、下剤でアナフィラキシーを起こしたことがあれば申告を。
  • 原因不明のアナフィラキシーや、注射薬でのアレルギーがある場合も申告を。
  • 接種できるかどうかは、医師が総合的に判断する。
  • アドレナリンでリスクは最小限になる。

ここまで書いて、ほむほむ先生が2021年1月24日の時点でyahooニュースがすごいなあ、とあらためて感じました。
新型コロナのワクチンは、アレルギーの病気を持っていると接種できないの?(堀向健太) – 個人 – Yahoo!ニュース
その圧倒的なスピードに、ただただ敬意の念を抱きます。

Source: 笑顔が好き。

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