天使か悪魔か?

内科医

  今年,私の父は米寿を迎えました.
  先日,元町の小洒落た和食店の個室を借り切って,私と弟の家族で企画したささやかな米寿の祝いをしました.
  孫4人のうち,3人のお嬢さんたちは皆神戸を離れているため,その場でじかに参加できたのは弟の長男のK君だけでした.
  そこでまず,私の娘たちには,LINEビデオを利用して生出演してもらいました.マニラの長女,東京の次女とface to faceでリアルタイムで話せた父には大変喜んでもらえたようです.

  また,ザルツブルクに留学中の弟の長女は,時差がある上にあいにく当日のスケジュールが合わなかったため生出演は叶わず,ビデオメッセージを作ってLINEで送ってもらい,母のスマホ(彼女も最近とうとうスマホデビューしました(笑))を通じて父にも見てもらうことが出来ました.

  それにしても昨今の通信情報技術の進歩には驚かされることばかりです.

  先日,自家用車を新しく買い換えましたが,通信技術を駆使した最近の自動車のハイテクぶりには驚くばかりで,一昔前の車とは隔世の感があります.

  医療の世界でもいまやネット環境を使えることが前提で,電子カルテの普及は目ざましく,診療報酬の請求も今や医療機関がオンライン請求が原則です.
  カルテをクラウドにアップすることにより関係者がどこからでもアクセスできるシステムも普及,当院ではまだ導入していませんが,病診連携への貢献はもちろん,すでに在宅医療では多くの施設で取り入れられています.
  今年から対面診療ができない患者さんのために,制限付きではありますがオンライン診療が診療報酬で認められるようになりました.しかし,患部の写真を送ってもらいLINEやビデオで相談に乗るといったことは,私も含めて既に以前からやっていた医師は多いと思います.
   患者さんに他院を紹介するときも,場所や診療時間はウェブで調べてGoogleで行きますと言ってくれると,混んでいる時などすごく助かります.

  教育現場でもタブレットがどんどん取り入れられており,私が学生の頃には想像すら出来なかったような質の高い授業ができるようになったようです.

  また最近はスマホのアプリを通したキャッシュレス決済も普及,私たち夫婦も先日iPhoneを新しく買い換えたのをきっかけに少しずつ始め,その便利さを享受しています.

  確かに,特に今世紀に入ってからあれよあれよという間に高度なネット社会となり,そして今度はいよいよAIが日常生活にどんどん入り込んできている昨今,技術の進歩に社会や法の整備がついていけず,様々な負の側面も露呈してきていることは否めません.

  しかしもはやこの流れは止められないと思います.世の中の物事の多くが,誰しもが携帯電話はもちろんスマホやパソコンを持ち,そしてネット環境が使えるということが前提になってきているわけですから,やむを得ないでしょう.
  いくら懐かしんだところで,もうアナログ全盛の昭和の時代には戻れないわけです.

  ただ,どんなにデジタル全盛の世の中になっても,わざわざ手間暇かけてやること,アナログなことが全くなくなってしまうことはないというのも確かだと思います.人間が人間らしくあるためには,便利さ,スピード,効率性とは対極にあるものも欠かせないことを誰しも知っているからです.

  このままAIが驚異的に進歩すれば,人間は何もすることや考えることがなくなってしまうなどという考えもあるようですが,だからこそなおのこと不便なことやアナログなことがしぶとく生き残るでしょうし,そうあるべきだと思います.
  CDや配信音楽が当たり前になった昨今,アナログレコードが復活しているというのもその表れかもしれません.

  私の人生も長くて今世紀半ばくらいまででしょうが,この先人類の未来はどうなっていくのか,情報通信技術やAIの進歩により,輝かしい未来になるのか,あるいはその逆か,不安でもあり,楽しみでもあります.


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Source: Dr.OHKADO’s Blog

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