ここまでのところで
加齢はテロメア長を短くし,
循環器系疾患では更にその短縮を加速する.
ここまでは明確でした.しかし
いかにもこれは不自然です.
このモヤモヤを解いてくれる報告がありました.
4つの2型糖尿病
『2型糖尿病』という単一の病気は存在せず,実は 4種のことなる糖尿病をドンブリ勘定でひっくるめて『2型糖尿病』と呼んでいるにすぎない,というAhlqvist博士の指摘は斬新でした .博士の提案する4つの2型糖尿病(SAIDは ほぼ従来の1型糖尿病);
はそれぞれ,病態も将来の合併症リスクもまるで異なっていたからです. これらを全部 ごった煮にしてしまっているから『2型糖尿病は複雑で多様な病気だ』ということになっていたにすぎないのです.
コレラと赤痢とノロウイルスと盲腸炎を,まとめて『腹痛症』という1つの病気と考えたら,混乱するのは当たり前でしょう.それと同じです.
Ahlqvist分類で考えてみると
そこで,4つの2型糖尿病を区別して テロメア長を検討した文献がこれです.
この報告では,まず『2型糖尿病』と診断されている患者を,Ahlqvist博士の data-driven cluster分析の手法にしたがって,4種に分類しています.その結果は下記の通りでした.
全部で246人ですが,4種の糖尿病の特徴がよく表れています.
- [1] MARD(軽度加齢性糖尿病)はもっとも平均年齢が高い
- [2] MOD(軽度肥満性糖尿病)はもっともBMIが高い
- [3] SIRD(重度インスリン抵抗性糖尿病)は 4種中,もっとも 平均HbA1cが低いのに,
- [4] それでいて,SIRDは,飛びぬけたインスリン分泌能(HOMA-β)と,それを帳消しにする 強烈なインスリン抵抗性(HOMA-IR)を示す
そして,4種それぞれについてのテロメア長です.
MARDの平均テロメア長は,もっとも短いのですが(上図 左), MARDとそれ以外(MOD,SIDD,SIRD)の2組に分けて比較すると,MARDだけが テロメア長が有意に短い(上図 右)ことがわかります.
これで謎が解けました.
- 糖尿病だからテロメアが短くなるのか,
- テロメアが短いから糖尿病になるのか
この2つの疑問に対して,この報告は両方とも答えを出しています.
- MARD以外では テロメア長は短くなっていないのだから,テロメアの短縮が糖尿病発症の原因ではない
- そしてMARDだけがテロメア長が短いのだから,糖尿病の内で MARDだけがテロメア長を短くする
さらに 糖尿病とテロメア長との関係を調べた以前の文献で,明確な答えを出せなかった理由も説明できます.
MARDもSIDDもSIRDもMODも,それら全部をひっくるめて『2型糖尿病』として,それを正常人のテロメア長と比較したために,MARDだけに存在する特徴が埋もれてしまっていたのです.
[7]に続く
Source: しらねのぞるばの暴言ブログ
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