酒を飲んで診療する医師は実は多い。その背景には医者の働き方がある

最近、航空会社のパイロットが酒に酔ったまま飛行機を操縦して大きな問題になっていますね。

パイロットには厳しい処分が下されています。

それでは医者とお酒の事情はどうなのでしょうか。

航空会社で相次ぐ飲酒問題

航空会社で相次いでいる飲酒問題、昨日も日本航空で1件、2017年の12月に成田―シカゴ線に乗務した男性機長(59)がアルコール検査を後輩の男性機長に変わって貰い、不正にすり抜けていたことが明らかになった。

去年の10月には、同じ日本航空で国際線の副操縦士がイギリスからの乗務前に、法令基準を大幅に超えるアルコールが検出され、現地で逮捕されている。

nifty news 2019.1.10

私はまずこのパイロットのニュースを聞いて非常に驚きました。

こんなことで大問題になるんだなぁ〜と。

確かに乗客の命を預かるパイロットに判断力の低下があってはなりませんから、アルコールに対して敏感になるのは当たり前です。

しかし、同じように命を預かる医師が酒に酔ったまま仕事をするのは非常によくあることなんです。

飲酒状態で診療に当たっている医師はたくさんいる

はっきりってしまえば、今日もどこかで酒に酔った医者が病院の中で働いていることでしょう。

このように断言できるには、いくつか理由があります。

医師には予期しない呼び出しがある

大きな理由のひとつは、医者には予期しない呼び出しがあることです。

医者の数が潤沢で完全な当番制になっている病院では、当番以外の医師が呼び出しを受ける事はほとんどないでしょう。

ですからこのような場合は、気兼ねなくお酒を飲むことができます。

一方で日本のほとんどの病院では医師の数が十分でなく、当番制といっても3日に1回当番があたることがしばしばあります。

また一応のところ当番が当たっていたとしても、緊急事態の場合には主治医が呼び出されてしまうことがよくあります。

それに外科医の場合は緊急手術となれば一人では完結できませんから、予期せず呼ばれてしまうこともあります。

これはつまりどういうことかと言うと、日本の病院で働いている医師は、いつ何時でも病院に呼び出されてしまう可能性があるのです。

したがって飲み会の席でお酒を楽しんでいる最中に病院に呼び出され、そのまま患者さんの対応に当たると言うこともよくあります。

私が呼び出された体験

実際に私も酒を飲んで酔っ払って、程よい気分になり、さぁ寝ようかと思ったところで病院呼び出されたことがあります。

また研修医の時代には酔った状態で手術を手伝ったこともありますし、患者さんに侵襲的な処置をしたこともあります。

お前は酒を飲んでいるから、やるな!

と言われたところでパイロットのように代わりの人間はいないですから、しょうがなくやるだけです。

ちなみにこの時は診療科公式の飲み会の最中に呼び出されましたらから、上司も看護師も承知の上で医療行為を行なっているのです。

酒に酔った人間が医療行為を行うなんてにわかには信じがたいことなのですが、決して珍しいことではないでしょう。

酒を飲んでいるがゆえ車を運転して病院にはいけないにも関わらず、病院では医療行為ができてしまう不思議です。

パイロットの飲酒問題から際立つ医師の異常な労働環境

こうなってくると、医師の労働環境の異常性が際立ってきます。

冒頭の航空会社のパイロットのように、今や飲酒には非常に厳しい目が向けられています。

飲酒運転をして人身事故起こして起こしてしまえば、刑事事件に問われます。ほとんどの職業では、停職や解雇など厳しい処分を受けることでしょう。

バスやトラック、電車の運転士などもパイロットと同様に、飲酒に関しては非常に厳格な規定が定められているはずです。

このように、とりわけ人の命を預かる職種と飲酒に関しては、もはや許容されない世の中になっているのです。

しかしながら医師の世界は異なっています。

24時間365日の間、実質的に待機であることも珍しくないがゆえ、お酒を飲んで酔っ払った状態で医療行為を行わなければならない状況が存在するのです。

現状の病院におけるアルコールの罰則規定

したがって現状医師の世界では、アルコールに関する規定は全くありません。

少なくとも、病院に到着して呼気検査をしたことは一度もありませんし、手術室に入る際にアルコール検査をすることもありません。

もし仮に飲酒の罰則規定を厳格に運用しようとすると、おそらく地方病院の医師たちは、旅行先・学会先でないと安心して酒を飲むことができなくなるでしょう。

また酒を飲んだもの診療を禁止にしたとすると、医者の数が足りなくて手術ができないなんてことにもなりかねません。

現実的に今の働き方では不可能です。

根本にあるのは医師の労働環境の特殊性

このような異常な状況の根本にあるのは、やはり医者の労働環境でしょう。

もし医者が看護師や技師のようにシフト制で働けるのであれば、きちんとお酒を踏むことができる時間を作ることができるでしょう。

そうすれば、パイロットのように仕事を始める前にアルコールチェックを行い、基準を逸脱した人間は罰するなんてことも可能でしょう。

罰したところでパイロットのように代わりの医師がいるかどうかは分かりませんが…

このように医療の中には、一般的な社会常識から想像ができないことがまかり通っているのです。

医者は長時間労働や当直で休めない。病院はブラック企業である

2018.01.05

Source: 医者夫婦が語る日々のこと、医療のこと

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