今こそ、清く正しく美しく、向き合おう。

医療機関

彼女と彼に初めて逢ったのは、

僕の大好きな大阪城が見える病室だった。

 

なぜかわからないが、彼らに出逢う前に、

僕とうちの保健師は、ミーティングルームに通された。

これまでの化学療法について、点滴について、

イレウス管(腸閉塞症状を緩和する管)について、

そして、予後について、お話を聴いた。

なぜか、彼女と彼抜きに、、、、、

 

清く正しく美しく、ない。絶対に、ない。

 

医療依存度を下げる、なんて、普通のことだ。

医療者だけが、普通じゃないと考えている。

 

点滴しながら、増えた胃液をドレナージしてる矛盾。

それを説明する時には、当の本人や家族が外される現実。

 

今だに、人の話を聴ける聴けない、よりもっともっと前の段階だ。

 

だから、僕はもう、そんなことの相手はしない。

正直、僕の残された時間も長くはない。

 

仲間と人生を楽しむために、

周りの仲間が幸せであるために、

そして、彼女や彼のために、

また、これから出逢う患者のため、

また、それが手にできず苦しむ市民のため、

僕は、医療依存度を下げることに、

真剣に本気で向き合うことにした。

 

 

 

あの日、あの大阪城が見える病室で、

こんな会話をしたことを想い出す。

 

はじめまして、タナカです。

こんなデブでロン毛の僕でも医師免はあるんです((笑))

僕を信じて、今、帰りませんか?!

やることないなら、、、意味ないなら、、、

ぶっちゃけ、もう今から帰りませんか?

 

彼女は、ニッコリ笑って彼の顔を見て、

また、僕の方に、笑顔を向けて、、、

 

良かった。こんな先生で。

でもね、、、センセ、、

ちゃんと準備して、練習して、

主人ができるようになって、、、

それから、帰りますね。。。

 

あのミーティングルームの話のことを露知らず。。。

 

 

僕らは、誰のために、何のために

医療を提供しているのか、本当に知るべきだ。

 

 

彼女は、4年前の6月25日にお家に帰られた。

 

訪問させていただいた時、本当に素敵な笑顔で、

「やっぱりお家はいいなああ、、、」

何かを察してコッソリ悲しい顔を

彼に見つからないように隠しながら、

満面の笑みで、そうおっしゃった。

 

その顔を見た彼は、僕が家を出た直後に

電話してきて、こう話された。

「先生、家に連れて帰ってきて本当に良かった。

でも、他に彼女を救える治療はないのでしょうか?

なんでも、彼女にしてやりたいんです。諦められない、、、

どうすれば彼女を救えるのか、、、教えて欲しい、、、」

 

僕はしばらく話を聴いて、それでも、

医者として、伝えるべき残りの時間について、逃げずに話した。

僕を可愛がる先輩から、患者から決して逃げるなと教わってたし、

それしか、医者のできることはなかったから。

 

清く正しく美しく、僕らが患者と向き合わなくて、誰が向き合えるんだ?

 

そして、彼女は、たった2週間。。。

4年前の7月9日に、天国に旅立たれた。

大切なご家族、大切なご友人が、見守る中で。

 

医療者よ、今こそ、本気で向き合おうじゃないか。

そんな本気の医療が今、待たれてるんだ。

僕はそう思って行動している。

 

今日は、旅立たれた彼女を想い出し、

今も必死に踏ん張る彼のことを思い、

彼が大好きなこの歌にしました。

良かったら聴いてください。

 

 

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Source: 兵庫県三田市の在宅療養支援診療所「たなかホームケアクリニック」

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