ハゲタカジャーナル

健康法

屍肉をついばむハゲタカは嫌われ者です. 生態系には必要な存在なのですけどね.

しかし 『ハゲタカファンド』と呼ばれる投資機関は,業績好調な会社に目をつけて株を買い占め,その会社の将来に必要な 工場設備の更新や研究開発投資まで配当に回すことを要求し,会社が抜け殻になって業績が傾くと,株を売り払って去っていく,まさにハゲタカのような存在ですから,嫌われて当然でしょう.


これと似た存在で,『ハゲタカジャーナル』というものがあります.英語では Predatory Journals[略奪雑誌]. 『粗悪学術誌』とも呼ばれています.
学術専門雑誌のような名前をつけていますが,ほぼすべて 紙の雑誌は発行していません.オンラインのみです.

前回記事 で科学専門誌のインパクトファクターについて述べましたが,ハゲタカジャーナルにはインパクトファクターは計算されません. 登録申請しても無視されるでしょう. なぜなら 専門誌として 最低限の論文査読すら行わず,論文審査基準すらありません(あるいは 審査基準を形だけ公表していいても それを実行していない).もちろん ハゲタカジャーナルに掲載される論文にロクなレベルのものはありません.

そんなひどい雑誌ですから,誰も読みません. しかしハゲタカジャーナルの発行者は誰からも読まれなくても一向にかまわないのです.かれらは高額の『論文掲載料』が目当てなのですから.金さえ払えばどんな原稿でも『論文』として掲載します.

ハゲタカジャーナルがどれくらいあるのかは正確には不明です.少なくとも数千はあるようです(一例はこちら).その雑誌名を見ると 名高い科学論文誌とそっくりの名前にしていたりします. 多くの大学では,間違ってもこのような雑誌に投稿しないよう呼びかけています.(京大の例 ).

なぜハゲタカジャーナルは存在しているのでしょうか?
それは彼らを必要としている人もいるからです. どんな雑誌でもいい,とにかく『科学雑誌・医学雑誌に論文が掲載された』と標榜したい人達です.インチキサプリ・怪しげな療法なのに

『国際的な医学専門誌に当社製品の効果を証明する論文が発表されました』

と言えればそれでいいのです.そのためならば,論文掲載料が高くても気にしません.宣伝広告料とこころえているからです.そしてその論文のコピーなるものを正面に打ち出して宣伝に使います.有名医学誌にそっくりの名前のものもありますから,ほとんどの人は騙されます.小難しそうな医学論文のコピーを見せられて,それが本当に まっとうな医学専門誌のものなのか,誰も調べませんからね.

ハゲタカジャーナルとそういう業者は 正に Win-Win,持ちつ持たれつの関係です.

おぬしもワルよのう

(C) 太郎丸 さん

『医学論文』を盛んに宣伝に使っているサプリ・療法などがあれば,その雑誌がインパクトファクターを算出されているのかをよく確かめましょう.

ただし つわものになると,インパクトファクターですら平気で嘘をつくので,第三者のサイトでそれが本当なのか確かめる必要があります.有名な雑誌の場合はネットで簡単に調べられますが,マイナーな雑誌では JCR 又は Web of Scienceに直接アクセスして調べる必要があります.ただどちらも有料なのが欠点です.

次善の方法としては,PubMed でその雑誌名を検索して 出てこなければ,ほぼハゲタカだと思って間違いないようです. ただし この方法で,出てこないからといって断定はできません.真面目な学術誌なのですが あまりにも狭い分野のマイナーな雑誌かもしれませんから. 逆に,PubMedに登場するからと言って絶対に安心とも限りません. 過去に発行されていた真面目な専門誌の版権だけを買い取って,今はハゲタカジャーナルに変身している例もあるからです.

Source: しらねのぞるばの暴言ブログ

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