コロナワクチン接種後に心筋炎を発症した青少年の血中から全長スパイクタンパクが検出された研究を紹介します。論文中では血中を循環するスパイクタンパクと心筋炎発症との関連が強く疑われています。
COVID-19 mRNAワクチン接種後の心筋炎発症者において血中を循環するスパイクタンパクが検出された
Circulating Spike Protein Detected in Post–COVID-19 mRNA Vaccine Myocarditis
Yonker et al. (2023) Circulation
https://www.ahajournals.org/doi/10.1161/CIRCULATIONAHA.122.061025結果
ワクチン後心筋炎を発症した人の広範な抗体プロファイリングとT細胞応答は、サイトカイン産生がわずかに増加したものの、ワクチン接種した対照者のものと本質的に区別がつかなかった。注目すべきは、ワクチン接種後の心筋炎患者の血漿中に、抗体と結合していない全長スパイクタンパク
(33.9 ± 22.4 pg/mL)
が著しく高いレベルで検出されたのに対し、無症状のワクチン接種対照者では遊離スパイクが検出されなかった事である
(対応のないt検定;P<0.0001)。結論
ワクチン接種を受けた青年および若年成人の免疫プロファイリングにより、心筋炎を発症した人とそうでない人の間で、mRNAワクチンによる免疫反応に差はない事が明らかになった。しかし、mRNAワクチン接種後に心筋炎を発症した青年および若年成人の血液中には遊離スパイク抗原が検出され、その潜在的な原因に関する考察が進展した。
心筋炎発症者の抗体プロファイリングには異常は見当たりませんでした。スパイクタンパク検出のためにも抗体が使われているように、こうしたスパイクタンパクが物理的に抗体と結合できないわけではありません。筆者らは心筋炎患者と健常ワクチン接種対照者の血漿サンプルの解析により、抗体中和能力に有意差がない事も確認しています。
時間の経過とともに、循環するスパイクタンパクが減少しているので、抗体を介してスパイクタンパクを血中から取り除く経路も機能していると考えられます。
では、なぜ血中を循環するスパイクタンパクと抗体とは結合していないのでしょうか?
筆者らはここでは直接触れていませんが、推測できる一つの理由は「量」の問題です。
つまり、抗体が中和できるよりもはるかに過剰のスパイクタンパクが生産されたのではないでしょうか。
抗体と結合した全長スパイクタンパクは血中を循環しにくいとしても、抗体よりもはるかに過剰なスパイクタンパクが生産されれば、そうしたものは血中を循環するでしょう。
また、循環スパイクタンパクは成人サンプルでは見られなかったので、スパイクタンパクの超過剰生産は子供の方が起こりやすい事も推測されます。
では、血中を循環する全長スパイクタンパクは一体どういった形態なのか?
スパイクタンパク単独で存在しているのか、あるいはエクソソームの形態なのかまではこの研究ではわかりません。
また、この研究の範囲では、スパイクタンパクが心筋炎発症の原因なのか結果なのかそれ以外なのかも不明です。
青少年がコロナワクチン接種後に心筋炎を発症する際に抗体やT細胞の免疫応答がほとんど変化していなかったという事は、青少年の心筋炎発症には抗体依存性自己攻撃やT細胞依存性自己攻撃に加えて別の作用機序も存在する可能性があります。
スパイクタンパクはアンジオテンシン変換酵素
2
の発現を抑制し、内皮の一酸化窒素の利用率を低下させます。これらの事象は血管を狭めて血圧の上昇に繋がる事から、血栓の原因となります。
2023年1月21日 04:52
Source: 身体軸ラボ シーズン2
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