きれいごと。

誰もがんになんてなりたくない

誰も病気になんてなりたくない

がんになるために
生まれてきたわけでもない

でも、
病気になってわかったことがたくさんある

病気が教えてくれたことがたくさんある

『がんになってよかった』――

その言葉には、
がん患者ひとりひとりに
思うことはある

「がんになってよかったか」

そう聞かれれば、
決していいことではないから

それが命にかかわる病気なら尚のこと

でもいいことがないわけではない

それは今、
こうして元気に生きていられるから
言える言葉なのだと思う

そう、それはきっと、きれいごと

もし、がんにならなかったら――

いや、がんになったのだから、
そんな“もしも話”はナンセンスだ

自分の身体をふたつに分けて、
がんになった人生と
がんにならない人生を
歩くこともできないのだから

でも、もし、
がんになっていなかったら、
きっと不平不満を言いながら
生きていたような気がする

優しい気持ちも持てず、
ひとの痛みも理解できず、
命の尊さも軽視し、
感謝の気持ちもなく、
ただ一日一日をやり過ごす

朝が来ることも当たり前

ごはんが食べられることも当たり前

健康がどれほど奇跡的なことか、
そんなことも考えず

そういう意味では、
がんになって、
少しは進歩したのかもしれない

少しは大切なものが
わかったのかもしれない

まぁ、これもきっと、
“きれいごと”なのかもしれないけれど――

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Source: りかこの乳がん体験記

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