まあ、そんなとこにしときますか。
お父さんに、
「燕が巣立ったら、お父さんも旅立ちますか？」って、
笑い話の中で、ドサクサ紛れに尋ねたら冒頭のお返事。
燕の巣を見上げるお父さんの本心が知りたくなった。
燕の巣を眺めながらの診察は恒例となり一か月。
やっぱり、病魔は確実に進行してきて、先週末、
自室から出れなくなって、緊急往診対応。
緩和医療の内服調整を行い、麻薬導入準備中。
医療用麻薬のご説明をすると、真っ先に聴かれたのは、
もう眠ってしまうんか？っていうご質問。やっぱり、
もう少し燕の巣立ちを見届けたいのかと思ったけれど、
いつもの燕の巣のあるガレージ診察場まで、
ふらふら歩きながら、出て行って、燕の子育ての話になった。
上手いこと餌を集めて、子育て上手の親もいれば、
全然エサが捕れんで、子育てが下手な親もおるんや。
そう話されるお父さんは、
ご自身の親父としてのこの人生を、
振り返っておられるご様子だった。
今日、息子と一緒に田んぼに虫よけ撒いたから、もうだいたい、ええで。
医療用麻薬ってのは痛み止めやろ？もうそろそろ使ってもらおう思うんや。
親父としての役割がそろそろ終わろうとしている。
それを、しみじみ感慨に耽っておられる様だった。
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Source: 兵庫県三田市の在宅療養支援診療所「たなかホームケアクリニック」
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