8月も終盤ですが,まだまだ記録的な猛暑が続いています.新型コロナの患者数は減少傾向ですが,季節はずれの風邪や気管支炎,気管支喘息の悪化,高齢者の肺炎など,呼吸器疾患が例年に比べて激増,やはりコロナ禍の間の長きにわたるマスク生活が自然感染の機会を奪い,免疫能を低下させてしまったせいなのかも知れません.
お盆休みはかみさんと共に横浜の次女の自宅に行ってきました.
私にとっては先月生まれたばかりの2番目の孫との初対面でした.
早くも10月に4歳を迎える上の孫も元気に明るく育ち,その天真爛漫な笑顔やおしゃべりや,新しくできた弟を可愛がっている姿が微笑ましく,癒されました.
次女夫婦はこれからしばらくは2人の元気な男の子の子育てに大奮闘となりそうですが,2人で協力して頑張って欲しいと思います.
帰りには,ふるさと納税でもらった旅行券が余っていたので,群馬県の水上温泉を訪れてきました.
言うまでもなく太宰治,与謝野晶子などの文豪も利用していた歴史ある温泉ですが,最近は他の観光地に客を取られて寂れさびれがちとのこと.
それでも,今回宿泊した「あらたし みなかみ」は,老舗旅館が軒を連ねる中,最近できたモダンな造りのホテルで,渓谷沿いに立地しているため眼下に広がる緑も眩しく,美味しい創作料理と温泉,部屋付きの露天風呂などで心からくつろげました.
さて,先月終わりから約3週間弱にわたって盛大に行われたパリオリンピック,今年も鍛え抜かれた一流のアスリートたちのパフォーマンスに魅了されました.日本人の活躍も目覚ましく,メダル獲得数も海外開催のオリンピックでは過去最高とのことでした.
毎度のことながら,大きな期待を背負いながらも実力を発揮できず残念な結果になってしまったアスリートたちもいますが,今回何よりも大きな問題になったのは,彼等への,SNSを通じての誹謗中傷の数々です.
東京オリンピックで兄妹金メダルという快挙を成し遂げた阿部一二三・阿部詩の2人が2大会連続金メダルという快挙を期待されて出場,兄の一二三は予想通り勝ち進んで金メダルを手にしたものの,妹の詩はまさかの(マスコミが頻用するこの言い方は私は好きではありませんが)二回戦敗退となり,個人戦では敗者復活戦にさえ進めませんでした.
予想外の出来事に本人も狼狽してしまい,しばらくはその場を離れることさえできず,コーチに抱き抱えられながら長い時間号泣していた痛々しい姿が注目の的となりました.
そして,メダルを期待されながらも大接戦のすえ,準決勝でイタリアに惜敗した男子バレーボールチーム.
阿部詩に対しては,礼節に反するとかタレント気取りだとか,またバレーボール選手に対しては敗戦の責任をとって早く引退しろとか,SNS上に数多くの心ない誹謗中傷や暴言のコメントが溢れました.
他にも,疑惑の判定とされる結果に対しては,審判や相手の外国人選手に対してこれでもかというほど酷い批判のコメントが書き込まれました.
例えば阿部詩の場合,確かにあの場面だけ切り取れば柔道人としての礼節にもとるかもしれません.
しかし幼少時から柔道一筋に打ち込んできた彼女にとって,そんなことは我々素人に言われずとも叩き込まれているわけです.
私生活の全てを犠牲にして過酷なトレーニングに耐えて4年に一度しかないオリンピックに出場すること,そして世界中の人々の注目の中,極限の状態でミスなく最高のパフォーマンスを行いメダルを取るということが,いったいどれほど過酷で困難に満ちており,どれほどタフなフィジカルとメンタルを要するかは,私たち凡人には想像すら出来ません.
彼女とて,まさかの一本負けをして放心状態の中,そんなことが可能なのであれば,時計を試合前に巻き戻したかったにちがいありません.
選手たちのそれまでの血の滲むような苦労や,負けた時の悔しい気持ちに少しでも思いを馳せれば,軽々しく批判することなどとてもできないはずですし,匿名をいいことに,心の傷に塩を塗るがごとく,上から目線で,さも知ったかぶりで汚い言葉で批判,罵倒するようなことは,卑怯で卑劣なイジメそのものと変わりません.
私は彼等に尋ねたい,自分は人生でどれだけの苦労をしてきたというのか?同じことが匿名でなくてもいえますか?と.
オリンピックのアスリートともなれば,フィジカルのみならず,無責任なマスコミ報道やSNSでの批判に対しても耐えうるような鋼のようなメンタルも必要という意見もあるでしよう.しかし彼等はオリンピック選手である前に,心を持った普通の若者であるということを忘れてはならないと思います.
これはスポーツに限ったことではなく,芸能人等に対しても同じで,ちょっとしたことで徹底的に叩き,最悪の場合自殺にまで追い込んでしまうことさえ日常茶飯事となっている状況尋常ではありません.
日本人は何事にも穏やかで礼節をわきまえ,和を尊重する,民度の高い民族と言われてきました.
しかし,そんな世界に誇れる民族性は一体どこへ行ったのか,いつからこんなに卑屈な民族に成り下がってしまったのかと考えると,本当に恥ずかしくなりますし,「絆」だとか「おもてなし」だとかという言葉が,どこか浮ついた,軽々しいものに聞こえてしまいます.
昨今の日本は政治も経済も外交も停滞,少子高齢化や貧困化が進み,とてもではありませんが一流の先進国などといえなくなってしまいました.OECD諸国ののアンケートによれば,自分の国に誇りを持ったり未来に夢を持っている若者の割合は,日本は最下位に近いとのこと,まさに危機的な状況です.
こういった土壌が,漠然とした絶望感を生み,不満のはけ口を弱者に向ける,そして少しでも人と違っていたり秀でていたりすると嫉妬を抱き,出る杭を打とうとするという風潮を作っているのかもしれません.
しかしどんな状況であれ,相手の人格を蹂躙するような言動は決して許されるわけではなく,厳罰に処されるべきと思いますし,最近は法的手段をとることも可能になって来てはいますが,何よりも基本は個人々々のモラルや責任の問題であり,私たち一人ひとりが,SNSを通じて言葉を発するということにいかに大きな責任が伴うかということを,いまいちど心からよく考える必要があると思います.
Source: Dr.OHKADO’s Blog
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