私はもともと本を読むのが好きで,今でも年間30冊は読んでいますが,最近はそのジャンルに経済やお金に関する本が増えました.その内容も,世界や日本の経済情勢を地政学や歴史を織り込みながらダイナミックに論じた本から,投資信託や株式のしくみ,そして資産運用の実際のノウハウ本にまで渡ります.
私たち医師は,いったん医師免許を取ってしまえば,医療はどの時代においても必要でなくなることはありませんから,よほど悪いことをして免許剥奪にでもならない限り,とりあえず食いはぐれることは滅多にないと言われてきました.
それに,医は仁術といわれるように,医療従事者の考えることはまず患者の命を救うこと,そのために金銭のことを口にするなどもってのほかという風潮もありました.
したがって医療の世界以外のことにはすごく疎くなりがちで,ある意味専門バカ,井の中の蛙と揶揄されて来ましたが,ある意味やむを得ない部分もあります.
今でこそ,医学部教育で医療経済や病院経営等のことも教えるようになったようですが,少なくとも私が医学生だったころにはそんなものはなく,卒業した後も,特に勤務医として雇われている間はまともに学ぶ機会も必要性もありませんでしたし,それよりも自分の技量を磨き患者さんたちの命を救う「本業」の方が優先でした.
しかし最近はそうも言っておられません.何よりも昨今の医療の高度化や少子高齢化による社会保障費の激増が国家予算を逼迫させるほどになっていること,そして何よりもグローバリズムにより日本の医療情勢も否応なしに世界経済に影響されているということを意識せざるを得なくなりました.
今やこの時代,医療の世界も鎖国のような状態を続けるわけにはいかなくなっているということです.
とくに開業医としてクリニック経営を行うようになってからは,小さいながらも個人事業主のトップとして仕事の半分以上は経営や人事に関することです.
医療資源である薬剤,物品や医療機器の価格や流通,種々の手数料,契約料,リース料,ローンや人件費等々が,すべて経済情勢に左右されますし,ワクチンや薬剤不足などにも代表されるように,日本の医療体制そのものが世界情勢の影響をもろに被ってしまうことが,コロナ禍を経て露呈されてしまいました.
国が決めた診療報酬制度により診療報酬が細かく規定されている保険医療費は,昨今の社会保障費の高騰により厳しく抑制されていますから,支出がかさめば収支は厳しくなるのは当然で,昨今は我々小規模な開業医のみならず,有名な大病院でさえ赤字に転落したり破産閉院するところが増えています.
「医療機関は儲かっている」などという一昔前のステレオタイプな考えに凝り固まっている人には信じられないようですが,事実です.
また,この年齢になると,クリニック経営とともに否応なしに自分たちの今後のお金のことが大きな関心事になります.
個人的には,保険や資産運用などで懇意にしているファイナンシャルプランナーの方に折に触れて相談しながら,老後に向けての(もう年齢的には老後に入りましたが(笑))準備をしていますし,銀行員であった亡父が仕事がら金融や株式のことに詳しく,折に触れて教えてもらったので,私もかみさんもかなり以前から株式や投資信託への投資は少しずつやってきましたが,特に最近はより深く勉強しだしたというわけです.
それに何より,医院経営を通じて,そして株式や投資を通じて経済のことや世の中のことが別の側面から見えてきて大変面白くもあります.
こういう話をすると,それはお医者さんのように余裕があるから出来るのだという人が必ずいますが,それは間違っています.
大企業などと違い企業年金や福利厚生もほとんどありませんから,定年退職して悠々自適などというわけにはいかないことが多く,唯一の利点といえば,上述したように医師免許が剥奪でもされない限りは高齢になっても働けるということです.
しかしそれは裏替えせば働かざるを得ないということでもありますし,開業医の平均年齢が60代前半と会社員なら退職するような年齢であることが,それを物語っています.
患者さんがいるからやめられない,後継者が見つからない,そもそもこの仕事が好きだからという理由もあるでしょうし,私も仕事自体が好きなので今は楽しんでやっていますが,それも,自分が健康であることが前提ですし,いつまでも同じように働けるかどうかはわかりません.
いつぞや話題になった老後二千万円問題のように,老後に関する政府の報告や年金等の施策を見ていると気持ちが荒みがちになる話題ばかりですが,人口が先細りしてかつての経済大国から凋落の一歩をたどっているのに寿命だけは伸び続けている我が国の現状をみればある意味やむを得ず,政府や社会ばかりのせいにして嘆いていても仕方ありません.
長い老後を幸せに生きるには何かと厳しい世の中ではありますが,健康に留意して,スキルを身につけるなどして少しでも長く,できれば楽しく働くこと,預貯金だけでなく少しでも投資をして資産を増やしていくこと等,否応なしになんとか自助努力していくことが求められている時代になったのだと思っています.
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Source: Dr.OHKADO’s Blog
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