斎藤知事の法解釈は「十分、成り立ち得る」
まず、そもそも斎藤知事の公益通報者保護法の解釈は成り立ちうるのか。
実際の公益通報者保護法の関連条文を確認しよう。11条2項は、「通報者を保護する体制を整備する義務」について規定している。
【公益通報者保護法11条2項】
「事業者は…3条1号および6条1号に定める公益通報に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の必要な措置をとらなければならない」ここでいう「3条1号および6条1号に定める公益通報」とは「役務提供先等に対する公益通報」すなわち「内部通報」をさす。
この条文の解釈について、斎藤知事は、「内部通報」についてのみ、通報者を保護する体制を整備すればよいと解釈している。
他方で、消費者庁の解釈では、監督官庁(2号)や報道機関等(3号)への「外部通報」についての通報者保護の体制整備が「その他の必要な措置」に含まれるということになる。
幸田教授は、「法律の条文を素直に読めば、斎藤知事が示す『内部通報に限定される』という解釈はむしろ自然であり、十分に成り立ち得る」とする。
知事が消費者庁の「公式見解」に従う義務は「ない」
では、法令を所管する官庁による法解釈の「公式見解」と、地方自治体の長の法解釈が異なる場合、どのように扱うべきか。
ちまたでは、消費者庁の「有権解釈権」を強調し、斎藤知事がそれに従う義務を負うかのような言説が散見される。
しかし、幸田教授は、地方自治体が所管官庁の公式見解に従う義務はないと説明する。
幸田教授:「消費者庁の解釈が唯一絶対ではなく、それと異なる解釈をとること自体は否定されません。
最終的に、『有権解釈権』によって法的解釈を確定することができるのは、司法権を行使する裁判所のみです。
また、消費者庁が地方自治体に対し解釈を示すことはあくまで『助言』にすぎないので、その解釈に地方自治体が従う必要もありません。
消費者庁が『助言』を超えて、地方自治体に解釈を押し付けることはあってはならないし、知事に消費者庁の解釈に従うよう圧力をかけることも許されません」
幸田教授はその法的根拠として、地方自治法2条12項・13項を挙げる。
地方自治法2条12項は、「地方公共団体(地方自治体)に関する法令の規定は、地方自治の本旨に基づいて、かつ、国と地方公共団体との適切な役割分担を踏まえて、これを解釈し、および運用するようにしなければならない」と定めている。
また、13項では、「自治事務」(※)については、「国は、地方公共団体が地域の特性に応じて当該事務を処理することができるよう特に配慮しなければならない」としている。
幸田教授:「わが国の行政法の権威で最高裁判事を務める宇賀克也博士は、これらの条文の趣旨について、『所管省庁から多少とも疑義が示されれば、自治体がその見解に納得できなくても安全策をとり、条例化を断念するのでは、地方分権の拡充を期待しえない』と説明しています(『地方自治法概説』(有斐閣)参照)。
国と地方自治体の関係はあくまでも対等です。戦前と異なり、地方自治体は国に従属させられる立場ではないのです」
消費者庁の対応の「問題点」
消費者庁の対応にはどのような問題があったのか。
幸田教授は、「消費者庁が、公式見解を明らかにする必要があると考え、県に伝えること自体は問題ない」としつつ、実際に消費者庁が兵庫県に送付されたメール、国会での消費者庁担当者の発言は、いずれも不適切だったと批判する。
幸田教授:「報道によれば、消費者庁から兵庫県へのメールの中で、『知事以下関係部署を含めて十分にご理解いただき、適切な対応をとられるよう何卒よろしくお願い申しあげます』との記載があったとされます。
これは『助言』の域を超え、自らの解釈に沿った対応をするように求める表現であり、不適切です。
また、4月23日の衆院消費者特別委員会で、消費者庁の担当官が『消費者庁が有権解釈権を持っている』と答弁しました。
これは明白な誤りです。前述の通り、『有権解釈権』を持っているのは裁判所だけです。直ちに発言を撤回すべきです」
裁判所権限を侵害した消費者庁長官「新井ゆたか」は即刻辞任せよ。
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Source: 身体軸ラボ シーズン2
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