ロマンと誇りの再発見

内科医

 このお盆休みは佐賀県へ旅行して来ました.
 九州は学会や旅行で何度も訪れていますが,佐賀は私にとって訪れたことなない「空白地域」となっており,またいちどは有名な吉野ヶ里遺跡に行ってみたかったため,連日記録的な猛暑で道中が思いやられましたが,思い切って決行しました.

 約40年前に発見され,奈良とともに邪馬台国発祥の候補地として躍り出た吉野ヶ里遺跡は,弥生時代の甕棺墓が人骨や装飾品などと共にそのまま保存されており,間近に見ることが出来ました.また当時の建物を忠実に再現していて,古代ロマンにどっぷりつかりながら楽しめました.

 そのあとは日本三大美肌の湯として(そんなものがあるとは初めて知りましたが(笑))有名な嬉野温泉で心よりリラックス,翌日は以前陶芸をやっていたかみさんの希望で,有田,伊万里へ.有田では宮内庁御用達の有名な深川製磁など,伊万里では,佐賀藩が御用窯を置いた場所として今も数多の窯元が軒を連ねている大川内山を訪問,数々の銘品に感嘆(と言っても私はよくわからないので値札で判断ですが(笑))

 最終日は北上して唐津へ,玄界灘と虹の松原を望むリゾート感満載の唐津シーサイドホテルに宿泊,翌日は唐津城を皮切りに市内観光,最後の締めはお馴染みのイカの活き造り,と相成りました.
 それにしても連日の酷暑の中,汗だくになりながら歩き回りましたが,良い旅となりました.

 開業してからはスケジュールを自分でマネジメントしやすく緊急で呼ばれることもほぼないので,海外のみならず国内のあちこちに時間を見つけては出かけています.

 我が国は狭い国土とはいえまだまだ知らないところも多く,生きている間に行ってみたいところは山ほどあります.

 古代日本は,北方や南方からやってきた縄文人の営みを土台にしながら,吉野ヶ里遺跡に象徴されるように大陸からの渡来人が稲作を伝えたことによりその黎明期を迎えたといわれています.

 四方を海に囲まれた我が国,元寇のように外からの脅威にさらされたこともあるものの,国が滅ぶようなこともなく,むしろ,外来のものも上手く取り入れながら,1500年以上もの長い年月をかけて他国にはない独自の文化を醸成してこれたことは世界史上でも奇跡と表現されることもあります.

 かつて米国に住んでいた頃,この話題を同僚である生粋のアメリカ人,Ericと語ったことがあります.その際,彼が “nepotism(身内びいき)” という言葉で感想を述べたのは忘れられません.当時の私は英語力も今ほど十分でなくうまく説明できなかったことも一因かもしれません.しかし,日本が世界第二の経済大国であったとはいえ,あらゆる面で米国が圧倒的な超大国であった時代,建国からわずか200年余りの歴史しか持たない国の現実主義や合理主義の価値観では,日本の文化的背景なぞ理解するのは難しかったのかもしれません.

 戦後の占領政策の余波として,自虐的な歴史観が私たちの内面に深く浸透してしまった側面がある上,近年はグローバリズムの潮流のもと,幼少期から英語教育を施すことが当然のように語られています.
 しかし,それ以前に,自国の文化や歴史を正しく学び,深く理解する機会がなおざりにされたままだと,いかに時代の要請であろうとも,それは本末転倒ではないかと思います.

 そもそも現代の日本人は,「神社とは?」「お盆とは?」「武士道とは?」「彼岸とは?」「大晦日とは?」「お中元やお歳暮とは?」といった基本的な問いに,果たしてどれだけ自信を持って答えられるでしょうか(もちろん私自身も胸を張れるわけではありません).
 観光立国を目指すのであれば,まず私たち自身が自国やその文化を少しでも知り,誇りを持つべきですし,それは決して排他的なことではありません.むしろ,自分たちの足元をしっかり見つめることで,他の文化ともより深くつながることができるのだと思います.

 今回の旅は,そんなことを考えさせられた良い機会ともなりました.

さが1

さが2

さが3


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Source: Dr.OHKADO’s Blog

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