体重は測れても
体重計に乗れば,体重は測れます. 最近の体重計であれば,ご親切にも 『体脂肪率』や『筋肉重量』などといったものまで表示してくれます.
しかし,実際に使っておられる方ならよくご存じの通り,朝と夕方ではまるで違う数字になります. 一晩寝ただけで脂肪や筋肉が何kgも増えたり減ったりするわけはありません.
これらの簡易測定器では,多数の日本人の体脂肪・筋肉量を実測[方法は後述]したデータを数値Tableとして記憶していて,あなたが入力した年齢・身長・性別データ,そしてその場で測定した体重と電気抵抗値[インピーダンス値;これも後述]とを参考にして,『もっとも近そうな値』を表から引っ張って表示しているだけです. つまり
その都度,体脂肪や筋肉量を実測しているわけではないのです
筋肉比率を知りたい
医学分野では骨格筋指数(SMI:skeletal muscle index)というものが使われます.
四肢の筋肉量を合計(ALM)し,これを身長の2 乗で割った値(kg/m2)がSMIです.
SMIが 男性で7 kg/m2,女性で5.5kg/m2 を下回ると,筋肉量が少なくサルコペニアのリスクが高いと判定されます.
四肢の筋肉総量を知るには
[実測]
一番 正確なのは,MRIやCTなどで全身の筋肉画像から個々の筋肉の形状・断面積を測定し,筋肉総体積を積分算出する方法です.
しかし,これは時間がかかるし,したがってコストも高い方法なので多くの人を測定できません.
[推定]
直接筋肉の体積を実測するわけではないが,かなり正確に推定する方法が2つあります.
- DXA 二重エネルギーX線吸収測定法
- 波長が異なる2種類のX線で全身をスキャンして,軟部組織と骨組織とではそれぞれの波長でのX線吸収率が異なることを利用して筋肉量を測定する方法です.
- BIA 生体電気インピーダンス分析法
- 交流に対する人体全体の電気抵抗(インピーダンス)を測定して,[脂肪=絶縁性],[筋肉などの組織=水分が多く伝導性が高い] ことを利用して,体脂肪率や筋肉量の推計測定に用いられる方法です.よくフィットネスジムなどに置いてある体組成測定計はこの方式です.インピーダンス測定は,四端子法(人体の4か所に電極を当てる)ですが,家庭用の体重計では足の裏の4か所なのに対して,スポーツジムなどに設置してある大型のものは両手・両足の4か所に電極をあてるため,精度は高くなります.
どちらの推定法も実際に筋肉の形状や大きさを測定しているわけではなく,『DXA法で(又は BIA法で),これくらいの数値が出た人は,MRIでの実測値これこれになる人が多い』という,相関性だけを頼りにして筋肉量を推定しているだけです.
なお,BIA法では機種により表示数値がかなり異なるという指摘があります.
もっと簡単な方法はないのか
いずれにせよ,以上の方式は誰でも簡単に(特に自宅でも)利用できる方法ではありません.上記のような装置のあるところに足を運んで測定してもらわねばならないからです.
非常に長い前振りになりましたが,今回の 日本病態栄養学会で「通常の健康診断の結果などから,誰でも簡便に自分の筋肉量を推定できないか」を検討した報告がありました.
筋肉量と糖尿病[3]に続く
Source: しらねのぞるばの暴言ブログ
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