世の中にジワジワと来るものはたくさんありますが;

ジワジワと来るメトホルミンの話です.
この記事で メトホルミンにはいろいろな種類があると書きました.
日本ではメトホルミンと言えば,先発/ジェネリックのどちらでも1種類しかありませんが,海外では 即放性(IR= Immediate Release)と徐放性(XR=Extended Release)の2種類が使われています. 徐放性とは,その名の通り,服用しても直ちには溶解・吸収されずにジワジワと薬を放出するものです.
この文献では,その放出特性を報告しています.

通常の(即放性の)メトホルミンは裸錠ですが,徐放性メトホルミンは錠剤を『ゲルシールド拡散システム』(GelShield Diffusion System)と呼ぶ膜でコーティングしてあり,これが水に濡れると直ちに吸水して,ブヨブヨのゲル状態になります.つまりメトホルミン錠剤が卵の白身でくるまれたような状態になり,内部からメトホルミンが溶けだすには長時間を要するようになります. そのため,メトホルミンを服用しても すぐには血中濃度が上がらず,長時間かけて完全溶出します.
実際,上記文献によれば,即放性IRと徐放性XRのメトホルミンの服用後血中(血漿)濃度はこのようになりました.

18歳から50歳までのヨルダン人男性78人(BMI= 17.1~28.6) の測定結果です.ヨルダンでは肥満の人は少ないようですね. 即放性IRメトホルミンの方が徐放性XRメトホルミンよりも血中濃度が高いですが,これは即放性IRは1,000mg/錠,徐放性XRは750mg/錠しか市販品がなかったためです.
徐放性XRでは 空腹時/食後服用を調べていますが,ここで食事とは ピタパン,黒オリーブ,目玉焼き,コーン,ビーフホットドッグ,フライドポテトという,ちょっと胸やけしそうな 高カロリー・高脂肪食です.
ピタパンとはこういうものだそうです.地中海沿岸域では よく食べられる,小麦粉だけのパンです.

当然ですが,徐放性XRメトホルミンは,即放性IRよりも 緩やかに血中濃度が上昇/下降し,ピークは服用後4-6時間と,即放性IRの倍以上遅くなっています. さらに 徐放性XRを食後に服用するとピーク時刻が更に遅れています.
ところで,即放性IRと徐放性XRとで,血糖値・HbA1cに対する効果はどうなのかが,この文献で報告されています.

9つの大規模ランダム比較試験,総対象者 2,609人のデータをまとめてみると,徐放性XRの血糖値低下効果は,即放性IRに比べて同じかやや悪いと報告されています.しかし その差は 臨床的には無視できるほどで,つまり治療効果はほぼ同じという結論でした.ところが 腹痛・下痢などの消化管副作用は 徐放性XRが優れていました.このことから海外,特に米国では 即放性IRよりも徐放性XRの方がよく処方されているようです.
メトホルミンで副作用を起こす人は多いので,日本でも販売されるといいのですが,製薬メーカーとしては,この非常に安価なメトホルミンの承認を厚労省から得るために 今更 手間暇と費用をかけるつもりはないようです.
Source: しらねのぞるばの暴言ブログ



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