人類の試練

内科医

   パンデミックとなった新型コロナウィルスは,今や世界中のありとあらゆる国や地域を未曾有の恐怖に陥れており,感染者数と死亡者数が猛烈な勢いで増加,4月になりついに全世界の患者総数が100万人,死者も6万人近くまでに増加してしまいました.

  米国ではあっという間に感染者数が30万人以上にもなり,イタリアやスペイン12万人以上など,欧米諸国のほとんどで感染者が爆発的増加して世界の流行の中心地となっています. 

 日本は現時点では欧米ほどではないものの毎日着実に感染者数と死者が増えており,しかも3月終盤からはその増加スピードに拍車がかかっています.
特に増加が顕著な首都東京は感染爆発寸前の状態で,国家非常事態宣言や首都東京のlockdownも現実味を帯びています.

 兵庫県でもすでに170人以上,クラスターも数カ所発生,神戸市内でも感染者が30人を超えています.

 日本人はもともと生真面目な国民性と高度な衛生観念を有しており,マスク着用にも抵抗がなく,握手やハグや公共の場であまり大きな声で話す習慣がなく,さらに国民皆保険で医療へのアクセスが容易であることが功を奏して他の国よりも感染が少ないとは言われていますが,無症状の若い人たちが知らぬ間に感染源となったり,自粛要請を無視した一部の人々の行動によりあちこちでクラスターが発生したり,また最近は感染経路の不明なケースが急増していて,非常に不気味です.

 長女夫婦が住んでいるフィリピンは,まだ感染者数がヨーロッパのように爆発的に増えている状況ではない3月中旬にドゥテルテ大統領が強い危機感と指導力を持って早々と緊急事態宣言を出し,首都Manilaもlockdownされたため,夫婦とも直前に脱出して東京にもどり,旦那さんは本社に通勤,長女はテレワークをしています.
 またもともと東京に住んでいる次女夫婦も,通勤の混雑を避けるためのフレックスワークやテレワークで対処しているようです.
 姪が留学しているザルツブルグのあるオーストリアも事実上の国境閉鎖となったようです.
 彼女たちとはLINEなどで連絡を取り合いながら励まし合っていますが,心から無事を祈るばかりです.

 コロナの脅威はすでに身近のところまで押し寄せており,先日も近隣の医療機関の看護師が陽性反応となり閉鎖に追い込まれました.
 医療の最前線にいる者としては,もし私やスタッフに感染者がでれば,数多くの患者さんやその家族に多大な迷惑をかけることになります.
 流行初期の頃と異なり,万が一発生しても感染防御さえしっかりしていれば必ずしも閉鎖の必要はないとの通達ですが,やはりいったん感染者が出たらそのまま通常どおりの診療を継続するというわけにはいかないので,毎日が戦々恐々です.

 最近は医師会から送られてきた下記の写真のようなものをクリニックの入り口に立ててまず外部から電話連絡してもらうようにし,さらに当院は外国人の患者さんも多いので英文も追加しました.

 感染者数が爆発的に出ている欧米ではマスクやガウン,消毒薬,人工呼吸器やECMOといった医療機器,そして何よりも病床の不足が顕著になっており,状況によっては年齢による命の選択さえせざるをえない状態になっているとのこと.疲弊し切った医療従事者の感染,死亡も相次ぎ,多くの医療機関が重症患者で溢れかえり阿鼻叫喚の地獄絵のような状態になっている映像は,映画の世界でもなんでもありません.

 しかしこれはもはや対岸の火事では決してないことを我々日本人も強く認識すべきです.すでに日本の医療現場も増え続ける患者でキャパシティが不足,医療従事者の感染も相次いでおり,まさに医療崩壊が起きつつあり,いつ欧米のようになってもおかしくはありません.

 政府もあれこれと対応策を出してはいますが,相変わらず諸外国と比べるとあまりにも生温く,全く危機感が感じられません.現時点で緊急事態宣言をまだ出していないというのも驚きですが,何を思ったか各家庭に布製のマスクを2枚ずつ配るという案を発表,このあまりにも馬鹿げた施策は国民全体からアベノマスクと揶揄されるばかりか,世界中から失笑を買っています.

 東京オリンピックもとうとう来年に延期となりましたが,これもまだ中止とならなかっただけマシです.でも来年には感染が完全に収束しているなんていう保証もどこにもありません.

 このコロナショックは,多くの人命を危険に晒すのはもちろん,世界経済にリーマンショックを遥かに凌駕する大打撃を与え,中小企業はもちろん,大企業でさえ倒産の危機に晒され,世界規模の大不景気をもららすに違いありません.

 私はこのコロナショックを,国家の覇権争いや人種や宗教の違いによる醜い争いや殺し合いを相変わらず繰り返し,地球温暖化問題にもまともに取り組もうともせず,かけがえのないを地球環境を破壊し続けている,もはやエゴイズムの塊となり下がってしまった我々人類への神様からの厳しい鉄槌のような気がしてなりません.
 堪忍袋の緒の切れた神様は「もう,お前らええ加減にせえよ」と怒り狂っているわけです.古くはノアの箱舟しかり,バベルの塔しかり,そしてやはり数多の人命が失われた100年前のスペイン風邪や50年前のアジア風邪しかり,堕落し切った世界に対する神の世直しに思えてならないのです.

 今,我々人類はかつてない試練の渦中にあると言っても過言ではないでしょう.今までの所業を深く反省し,国家や民族を超えて心から協力し合ってこの見えない敵との闘いに勝利すべく叡智を絞る時だと思いますし,これをきっかけに世界が団結して真の世界平和が訪れるのであれば,この悲惨な経験も決して無駄にはならず,神様も許してくれるのではないかと思います.
corona


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Source: Dr.OHKADO’s Blog

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