1955年 食糧難は脱したが
戦後の混乱期はようやく収まったものの,まだ高度成長以前である1955年(昭和30年)の日本全体の栄養状況の調査結果です.
栄養素別のカロリー比はこの通り.
まだまだ炭水化物のカロリーが圧倒的(79%)です.また動物性食品(脂質・蛋白質)は合わせても6%. 当時 肉類は『滋養豊富』だが,まだまだ手の届かないものでした.
特に動物性食品が少ないので,ビタミン不足は深刻でした.
ビタミンBが豊富な動物性食品の摂取量が少ないので,圧倒的なビタミンB不足に陥っています.
なお,この頃の栄養調査では ミネラルやビタミンまで調べているのですが,塩分(NaCl)は調べていません.当時の感覚では『栄養』と聞けば『不足』が合言葉であり,何かが過剰という感覚はなかったようです.
健康的な時代?
上記が『健康的な食事』であるはずもなく,疾病状況はまだまだひどいものでした.
1947年に比べて,六大都市では幾分改善しています. しかし,現在の日本でこんなに栄養失調症状が発生したら大騒ぎになるでしょう. また農村部では ほとんど改善されていないどころか悪化していることもわかります.
1952年(昭和27年)には「栄養改善法」という法律まで作って,各自治体が地域住民に栄養指導を,保健所では食品の栄養成分の検査を,そして食品製造業には栄養成分の表示を求めていました.
なぜなら当時の食糧事情は,カロリー総量としてはかろうじて必要量に達したものの,その内容を見るとまだまだ貧相なものだという認識があったからです.
当時の体格
それを裏付けるのが,当時の日本人の疾病及び体格調査結果です.
1955年と2015年とを比較しました. 1955年の男性は,おおむね現在の女性よりも小さく痩せていたのです.BMIだけを見ると,当時は男女ともほぼ21と 今から見れば羨ましくみえるかもしれませんが,これは数値上の話で『痩せこけていた』と呼ぶのが正しいです.
ただし現在の中年男性のBMIは平均24ほどですから,これは明らかに肥満でしょう.
『食の欧米化』という言葉をネガティブな意味で使う人の中には,昭和30年代こそ日本伝統食の原点だとほめそやす人も見受けられます.しかし,当時の日本人は,米国映画などで,台所にある巨大な冷蔵庫や,一抱えもありそうな牛乳瓶・ハムの塊などを見ると生唾を飲みんでいたのです.
糖尿病が少なかったいい時代?
『昭和30年代の日本人は,質素な食事で糖尿病も少なかった』
などと書いてあるものをよくみかけます. しかし.栄養状況,疾病発生率,そしてこの体格で,本当に『健康的で糖尿病も少なかった』のでしょうか? 次回は この頃の糖尿病がどうであったのかを調べます.
[3]に続く
Source: しらねのぞるばの暴言ブログ
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