新型コロナウイルスの正式名称は「SARS―CoV―2」という。重症急性呼吸器症候群(SARS)を起こす、2番目のコロナウイルスという意味だ。
新型コロナウイルスに感染しても多くの人は命に関わることはない。中国での新型コロナウイルス患者の大規模疫学調査によると感染しても8割は、軽症か中程度で、入院が必要になるのは2割程度。重篤になるのは5%とされる。
米科学誌サイエンスによると、感染者のせきやくしゃみなどの飛沫(ひまつ)に含まれるウイルスは、鼻やのどから体内に取り込まれる。すると、細胞の表面にある「ACE2」という受容体にくっつき細胞に侵入する。
鼻の内側の細胞にはこの受容体が多い。細胞を乗っ取ってどんどん増えていく中で、熱や空ぜき、味覚や嗅覚(きゅうかく)の消失が起きるとされる。
ウイルスが肺に到達すると深刻度は増す。気管支の末端には、酸素を取り込み、二酸化炭素を排出する肺胞がある。この表面にはACE2が多く、ウイルスがくっつきやすい。
ウイルスが侵入すると、免疫が攻撃するため肺胞が炎症を起こす。感染した細胞が死ぬことで、その残骸や体液などが膿(うみ)となり、肺にたまって呼吸が難しくなる。中国・武漢で当初「原因不明の肺炎」と報告されたのはこのためだ。
しかし、影響は肺だけにとどまらないことが、最近の報告でわかってきた。
その結果、18名中11名(男性7名、女性4名)においてA型インフルエンザの確定診断がなされ、そのうち5例において凝固系の指標の血中D-ダイマーが415-550ng・ml^<-1>と上昇しており、そのいずれにおいても重篤な低酸素血症(動脈血酸素飽和度:SpO2で81-86%)が認められた。呼気中CO濃度も5-8PPmと5症例で著明に上昇していた(正常値0-1ppm)。しかし、5症例とも胸部レ線、およびCTスキャン上わずかな索状影を除いて肺野に明らかな浸潤影は認めなかった。そのうち4症例の肺血流シンチグラムでは、中枢側の肺血管の欠損像は認めなかったが、いずれにおいても、抹消側の血流障害が認められ肺微小血管の血栓症が示唆された。4症例のうち同意の得られた3症例に対して、ヘパリンおよびウロナーゼを用いて抗凝固療法が施行され、いずれにおいても5日目よりD-ダイマーの改善およびSpO2の改善が認められ救命されたが、同意が得られず抗凝固療法の施行されなかった1例は救命できなかった。
以上より、インフルエンザの重症化には、生体内の酸化ストレスの増加に伴い肺微小血管の血栓塞栓症が関与しており、その治療に比較的早期からの抗凝固療法の開始が有効である可能性が示唆された。
インフルエンザにかかると心筋梗塞になりやすいのではないかという仮説は1930年代頃から言われていたようですが、昨年それを証明する研究がNew England Journal of Medicineという医学誌に掲載されました。
この研究によると、インフルエンザと診断されて7日以内は心筋梗塞になるリスクが6倍(インフルエンザBでは10倍、インフルエンザAでは5倍)になるとのことです。
これはインフルエンザにかかることで、血管に炎症が起こり血管の内皮が傷ついて血栓ができやすくなったり、感染のストレスによって心血管が攣縮(血管が痙攣性の収縮をすること)し血管内腔が詰まったり、といった機序が考えられています。
特に65歳以上の高齢者で多くなるようですが、これはもともと心筋梗塞が高齢者に多い疾患だからだと考えられます。
ちなみに診断されてから7日以降は心筋梗塞に対するインフルエンザの影響はなくなるようです。
ということで、インフルエンザはそれ自体が重症化することがあるだけでなく、二次的に心筋梗塞を誘発しうる怖い感染症なのです!
Source: 身体軸ラボ シーズン2
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