“デポ注”時の下着選び。

生まれてこの方、
“下着の捨て時”に悩まなかったことはない

「もう一度洗濯してはいてから捨てよう」
「次、はいたら捨てよう」

そう思っていても勿体なくて捨てられず、
結局また洗っては、はく...の繰り返し

大きく破れてしまうなどの“大惨事”がない限り、
捨てることには、なかなか思い切りが必要だ

  ※もちろん、
   “洗濯すれば、必ず、はく”

   “洗濯をしたのにもかかわらず、
   はかずに捨てる”

   ...なんてことは、
   母の教えに背くのだ

「交通事故や道端で突然倒れて、
 救急車で運ばれて、
 “変なパンツ”をはいていたら、
 さぞかし恥ずかしいだろう」

と、考えたことは数知れず...

そして、

「一生のうちで、
 そんなに簡単に救急車で運ばれることはない」

と、あまりにも確率の低いアクシデントを否定しながら
生きてきた

そんな私が、下着選びに迷った2年間がある

それは、“デポ注”*でのことだ

  *乳がんホルモン療法のお腹に打つ注射、
   “LH-RHアゴニスト製剤(デポ剤)”

   “デポ剤の注射”だから、“デポ注”と、
   私は勝手に言っていた

当時は、4週間ごとの投与だった

注射は、
“今回、右に打てば、次回は左...”と、
打ち分けてくれた

当時はジーンズで通院することが多く、
ファスナーを下ろしてお腹を出して、
診察台に横になったまま、
主治医が来るのを待っていた

...と、この状況を考えれば、
けっこう“おパンツ”が見えることは、
想像に難くないであろう

そこで考えるわけだ

「ウエストまですっぽりの“おパンツ”は、
 そもそも注射を打つとき邪魔になるし、
 ちょっとダサい(お洒落なものもあるが)。
 かといって、
 レースの、あまりセクシーなものでもいけない」

と...

その“中途半端加減”が難しいのだ

そんなこんなで、通院前日の夜は、
タンスを開けて、“おパンツ探し”

今でも毎日、下着を着けるたび、
あの頃の、そんな時代を思い出し――

  本日の夜の空

  南の闇に、
  淡いオレンジ色の月が浮かんでいる

  あしたは満月

  どうか観られますように...

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Source: りかこの乳がん体験記

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