食事療法の迷走[41] 食品交換表 第7版 勝利の凱歌

健康法

2013年 食品交換表 第7版

2013年に『食品交換表 第7版』が発行されました.前回の第6版が2002年でしたから,11年ぶりの改訂です.現在 使われているのは,この第7版です.

(C) 日本糖尿病学会

変更点は

第6版と第7版とを見比べると,もっとも目を惹くのは『糖尿病についての解説』が付け加わった,又は詳しくなったことです.

たとえば,糖尿病発症に至る説明について,第6版と第7版とを比較すると以下の通りです.

このように比較すると,第6版には 『決めつけ』が多かったことが目立ちます.

1型糖尿病の『多くは子どもや若い人が発病します』というのは,発行年(2002年)が古いことを勘案しても,成人や中年以降に1型糖尿病が発症することは珍しくないことが知られていたはずです.

また2型糖尿病の発症原因として,『インスリンの働きが悪くなるために,インスリンが多く必要となります』とあるのは,あたかも2型糖尿病のすべてが『インスリン抵抗性』であると断定しており,不正確です.

同様に2型糖尿病は『悪い生活習慣が発症に大きく関連』とあるのは,だらしない生活が2型糖尿病の原因であると言わんばかりで,これには 憤慨する人は多いのではないでしょうか.

これらの点について,第7版は おおむね妥当な表現に改められています. 2型糖尿病には『インスリン分泌不全タイプ』もあることが明記されました.さらに2型糖尿病は,ストレスや加齢によっても発症しうるという記載を付け加えています.医学的には当然の事実ですが,これらは第6版では無視されていたのです.

カーボカウントは曖昧模糊

第7版では,あれほど学会で論議された『カーボカウント』については,その言葉すら登場しません. つまり『カーボカウントは食品交換表に記載すべできはない』という意見が通ったわけです.ただし カーボカウントを誰にでもわかるようにという配慮なのか『炭水化物量を把握する』という記載があります.

炭水化物の中の糖質は食べた後,速やかな血糖上昇につながります.食べすぎると高血糖になってしまいますから,1回の食事で食べるおよその量を決めておきます.

食品交換表 第7版 p.7

たったこれだけです. しかし,その下に わざわざ1コラムを設けて;

炭水化物量を把握することと糖質制限のちがい
食事に含まれる炭水化物の適正な配分は摂取エネルギーの50~60%です.食後の血糖値は主に食事に含まれる炭水化物(厳密には糖質)の量によって変動するので,血糖コントロールを行ううえで,食事中にどれだけ炭水化物(糖質)が含まれているかを把握することは大切です.ただし,この考えが糖質制限食に結びつくことがあり注意が必要です.極端な糖質制限食は長期的には腎症や動脈硬化の進行などが懸念され,決して勧められません.

食品交換表 第7版 p.7

とも書いています.

糖質制限食が必ず腎症や動脈硬化に結びつくというエビデンスはないのですが,それを『懸念され』という言葉で きわどく逃げています.

『食後高血糖は大血管障害のリスクが高まるのだから,糖尿病患者にカーボカウントを教育して 糖質量と食後血糖値の関係を理解させるべきだ』という指摘には,最小限の追記で済ませています.

同時に 『この考えが糖質制限食に結びつくことがあり注意が必要です』という表現は,まるで政府広報の『覚せい剤防止キャンペーン』を思い起こさせるような表現です.

糖質制限食は犯罪なのでしょうか? 特定の食事パターンを指定して,『実行してはならない』などと書いたのは,食品交換表の歴史で初めてです.


この食品交換表 第7版への改訂は,2013年3月の『学会 提言』,そして同5月の学会シンポジウムで打ち出された方向にピッタリと一致しています.

『糖質制限食 反対派』が完全に勝利を収めたのです.反対意見の主張を強化したうえで,全国の関係者に知らしめることが第7版発行の目的であったようです.

[41]に続く

Source: しらねのぞるばの暴言ブログ

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