食事療法の迷走[49] 反攻 Counterattack

健康法
逆上陸
(C) JAPAN NAVY さん

同じ土俵で議論しよう

前回までの記事で見てきた通り,2012年に 初めて学会の公式の席上で,『糖質制限食』か『カロリー制限食』(エネルギー制限食)かという論争が行われました.

それ以降 何度かディベートやシンポジウムで,このテーマが取り上げられてきました.
しかしその論争は,『カロリー制限食』を推奨する人が『糖質制限食のリスク』を指摘したり,『糖質制限食のエビデンス』の提示を求めるというパターンがほとんどでした.

ところが2015年の学会で『ユネスコは和食を健康食として推奨したというのは誤りだ』という趣旨の講演会が行われたあたりから,議論の様相は変わってきました.

つまり,それまで糖質制限食に対して投げつけられてきた疑問文を,そっくりそのまま『食品交換表』=『炭水化物60%のカロリー制限食』に対してぶつけてみると,どうなのかというパターンです.

糖尿病食事療法の新たなエビデンスを求めて』(2016年 第59回日本糖尿病学会 シンポジウム17)というタイトルが典型的ですが,

糖質制限食であれ,カロリー制限食であれ,一方的に議論するのではなく,両者にどれだけのエビデンスがあるのか,同じ基準で公平に議論しよう

という流れになってきたのです.

糖質制限食では,北里大学の山田悟先生が精力的に 糖質制限食の学術論文データを多数示しました.

ところが

カロリー制限食は強く推奨されてきたのに,その有効性を示す『エビデンス』がどうであったかといえば;

「糖尿病診療ガイド ライン」では,「食事のなかの炭水化物を 50~60% エネルギー,たんぱく質 20% エネルギー以下を目安として,残りを脂質とする.」と記載している.
[中略]
しかし問題点の一つとして,現状では各栄養素についての推定必要量の規定はあるものの,相互の適正比率を定めるためのエビデンスには乏しい点が挙げられる.すなわち,前述の栄養素バランスの目安は,,今のところ健常人の平均摂取量に基づいているにすぎない

第59回日本糖尿病学会 シンポジウム26『これからの食事療法の展望

ガイドラインに『適正である』と記載している炭水化物/脂質/蛋白質の比率は『エビデンスには乏しい』と文書で認めざるをえなかったのです.しかし,『炭水化物60%』は食品交換表で推奨する『唯一正しい糖尿病の食事療法』の根幹であったはずです.そこにエビデンスがないというのであれば,その他の疑問点にどう答えられるというのでしょうか?

北里大学の山田悟先生が 学会で『立場の逆転』という挑戦的なタイトルで講演を行ったのも,まさにそれが理由でした.

防衛ライン

すでに『カロリー制限食』に対しては,多くの疑問が寄せられていましたが,重要な2つの『説明要求』に対して,満足な回答が提示されませんでした.

そして,3本目の矢が決定的になるのです.

[50]に続く

Source: しらねのぞるばの暴言ブログ

コメント

タイトルとURLをコピーしました