メロンによる食中毒

内科医

 

 

輸入メロンによる細菌感染が話題になっています。

 

豪の輸入メロン細菌汚染 注意を

 

感染症の原因となる細菌に汚染されたメロンが、ことし、オーストラリアから日本に輸入されていたことがわかり、厚生労働省は注意を呼びかけています。

WHO=世界保健機関によりますと、リステリア菌と呼ばれる細菌に汚染されたオーストラリア産のカンタループメロンという品種のメロンを、日本やシンガポール、それにマレーシアなど9か国が輸入していたことがわかったということです。

 

リステリア菌はメロンの皮に付着していて、食べる際に一緒に口に入ると、妊婦や子ども、それに免疫力が低下している人や高齢者などでは、発熱や頭痛、それにおう吐などの症状を起こすことがあり、場合によっては重症化して死亡するケースもあります。

 

このメロンはオーストラリアのひとつの農場で作られたもので、厚生労働省によりますと、日本ではことし1月中旬に198個が輸入され、すでに一般に販売されましたが、被害の報告は今のところないということです。

 

WHOによりますと、リステリア菌は症状が出るまでに1か月以上かかるケースもあり、オーストラリアではことし1月から今月にかけてこのメロンを食べた19人の感染が確認され、7人が死亡したということです。

 

厚生労働省は「ことし1月中旬ころに購入したオーストラリア産のメロンを冷凍するなどして保管しているような場合は、食べないようにしてほしい」と注意を呼びかけています。

 

NHK NEWS WEB

 

 

メロン自体の食中毒が多いわけではありませんが、衛生状態が良くなかった昔はメロンで食中毒の記録があります。

 

 

メロンについての記述で初期のものには、何も知らない人が食べて命を落としたという警告が多数ある。前にも書いたように、プラティナは1471年に、教皇パウルス2世が巨大なメロンを2個食べ、脳卒中を起こしてなくなったと書いた。1681年にはメキシコのヌエボ・レオンの総督が急死した。

カンタロープメロンとスイカの食べ過ぎが原因とされる。1720年代には、ロシアのピュートル大帝が、ペルシャに派遣した軍にメロン禁止令を出した。メロンを食べたことが、ロシア軍が苦しんでいた高熱の原因と考えたためだ。

だがなぜメロンはこうも危険視されたのだろうか。その答えを見出すには、西洋では少なくとも古代までさかのぼる必要がある。

ヒポクラテス(期限前460~同377)以降の医学は、人間の身体の構成要素を4つの体液(気質)とする説が主流だった。この説においては、血液(多血質)、黄胆汁(胆汁質)、黒胆汁(憂鬱質)、粘液(粘液質)というように、それぞれの体液に気質が関係する。

そしてあらゆる食物は、熱、冷、湿、乾という4つのカテゴリーに分類でき、これをコントロールすることでそれぞれの気質のバランスをとり、健康促進と回復を行う。メロンは冷たく湿った食物とされ、熟成チーズや酢、塩漬け肉など熱く乾いた食物でバランスをとることが必要だった。

こうして生まれたのが、私たちが「今」この時代に食べている、生ハムで包んだメロンの前菜だ。気質説をもとに、メロンの「冷たい」性質に「熱い/乾いた」生ハムを合わせてバランスを取り、「存在の大いなる連鎖」に従って、一番安全な順序でメロンを食べるのだ。

現代人はメロンが胃に悪く、死さえも招くという考えを一笑に付するだろう。しかしこうした昔の考えはあながち的外れとも言えない。メロンの実は地面に生り、動物(あるいは人間)の糞を肥料とすることも多い。

なめらかでないメロンの果皮には大腸菌その他の汚染物質がつきやすく、十分に洗わないとそれらがメロンと一緒に体内に入ってきて重い病気を引き起こすこともある。北米では2004年に、メロンを介した大腸菌感染で多数の死者が出ている。

<メロンとスイカの歴史>

シルヴィア ラブグレン
原書房
 

リストリア菌自体は、健康な成人なら非常に多く摂取しなければ発症しませんが、「ことし1月中旬ころに購入したオーストラリア産のメロンを冷凍するなどして保管しているような場合は、食べないように」にすることが大切でしょう。

 

 

リステリア・モノサイトゲネス(以下「リステリア」と呼びます。)は、河川水や動物の腸管内など環境中に広く分布する細菌です。

 

我が国のこれまでの食中毒統計では、リステリアによる食中毒の報告例はありませんが、食品安全委員会の評価書によると、リステリア感染症の推定患者数は年間200人(平成23年)とされています。

 

リステリアに感染して重症化することはまれですが、妊婦、高齢者の方は注意が必要です。

 

食品由来によるリステリア症は、年間住民100万人あたり0.1~10人とまれです。ただし、重症化すると致死率が高い疾患であることから、世界保健機関(WHO)においても注意喚起を行っています。

菌の特徴

リステリアは、他の一般的な食中毒菌と同様に加熱により死滅しますが、4℃以下の低温や、12%食塩濃度下でも増殖できる点が特徴です。

 

一般に、食品を冷蔵庫で保存したり、塩漬けしていると、食中毒菌が増えないと思いがちですが、このような条件でもリステリアは増殖し、食中毒の原因になる恐れがあります。

 

しかし、健康な成人では非常に多くのリステリアを摂取しなければ発症しないため、賞味期限や保存方法を守っていれば、食中毒が発生するほどの菌数にはなりません。

 

また、発症しても軽症で自然に治るとされていますが、リステリアに感染したときの症状の重篤度には個人差があります。

 

悪寒、発熱、筋肉痛などインフルエンザなどの他の感染症と区別が難しい場合や、敗血症、髄膜炎、中枢神経系症状などを引き起こす場合(リステリア症)もあります。

気をつけた方がよい食品

欧米では、ナチュラルチーズなどの乳製品、生ハムなどの食肉加工品、スモークサーモンなどの魚介類加工品、コールスローなどのサラダなどでリステリアによる集団食中毒が発生しています。

 

また、国内では、乳製品、食肉加工品や魚介類加工品などから、とても菌数は少ないですが、リステリアが検出されています。

 

冷蔵庫に長期間保存され、加熱せずにそのまま食べられる食品は、原因となりえますので注意が必要です。

 

◆リステリア食中毒の主な原因食品例
  ・生ハムなどの食肉加工品
  ・未殺菌乳、ナチュラルチーズなどの乳製品(加熱をせずに製造されるもの)
  ・スモークサーモンなどの魚介類加工品

気をつけていただきたい方 ~妊婦、高齢者は注意が必要です~

妊婦、高齢者や免疫機能が低下している方(抗がん剤治療中やHIVエイズの方など)は、少量のリステリアでも発症し、敗血症や髄膜炎など重篤な状態(リステリア症)になることがあり、海外では死亡例も確認されています。

 

特に、妊婦が感染すると、リステリアが胎盤や胎児へ感染し、流産や生まれた新生児に影響がでることがあります。

 

(平成22年、アメリカでカンタロープ(メロンの一種)を原因食品とするリステリア食中毒が発生し、33名の方が亡くなられました。また、患者の多くは60歳以上でしたが、1名の女性患者は流産したと報告されています。)

 

厚生労働省 <細菌による食中毒>

 

 

 

Source: 内科医「コンソン」の意外と知らない医療のハナシ

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