自らプライベートをべらべら喋るタイプではない
他人に聞かれるのも好きではない
だからこのブログも、書籍も、初めの頃は、
検査内容や病状は詳しく書いていない
どちらかというと．．．
いや、幼少期から、
“無口でおとなしい”人間だった
今は誰も信じてくれないが．．．
自分のことを少し話せるようになったのは、
このブログ
そして、患者会で
お手伝いをさせていただくようになってから
「自らの経験を話すことは、
誰かの役に立つのかもしれない」
そう気づいてからだった
これまで自分のことを話すのは、
恥ずかしいことだと思っていた
自分のことでその場の大切な時間を潰すのも、
「迷惑かもしれない」と思っていた
そんな今では、病気の経験はなんとか話せるが、
やはりプライベートに関しては、
あまり答えたくないのが現実だ
そして、こんなことがけっこうある
それは、
久し振りに知人に会ったときのこと
ほとんどの場合、
「今、なにやってるの？」
という話になる
．．．というより、聞かれる羽目になる
“なにをやってるか”とは、
これまた大雑把な言い方である
相手はどんな答えを求めて聞いているのか．．．
おそらく、仕事の内容だろうか
あまり大きな声で、
ひとに言えるような職に就いてこなかった私は、
．．．という言い方をしてしまうと、
これまでの職場に申し訳ないか．．．
そんな質問を浴びせられるたび、
自分の存在が否定されているような気持ちになった
大きな会社で立派な仕事をしていれば、
そりゃあ、胸を張って言うだろう
“大きな会社の立派な仕事”が
どのようなものかはわからないが．．．
私は過去に婚姻経験を持つ
そのときはさすがに、
「結婚をしたのだから、
もう“何やってるの？”はないだろう」
と、あの質問が飛んでこないことに清々していた
たとえ聞かれたとしても、
「主婦」
そう答えればいいのだ
が、甘かった
「結婚して子どももいないのに、
なにもしてないの（働いてないの）？」
「楽でいいね」
「いいな、主婦は。3食昼寝付きか」
今度は、そう言われるようになったのだ
『3食昼寝付き』？
そんな言葉にも驚いた
確かにごはんも食べられる
寝るところだってある
が、“昼寝”なんてしないし、する時間もない
“昼寝”なんて考えたこともない
“主婦”という人たちを、
そんなふうに見ていることに憤りを覚えた
“主婦”は忙しい
朝から晩まで、土日も関係なく、
家のこと、家族のために動いているのだと思う
あるとき、私はそんな質問に疲れた
何を答えてもあまり印象がよくないのなら――
それこそ、有名会社の名前でも挙げれば、
賞賛の嵐なのだろう
――「なにもしていない」
そう言うことにした
が、それはそれで、
やはり傷つく言葉が返ってくる
私が乳がんになったことを知らない人からは、
闘病中、
「いい若いもんが勿体ない。働け、働け！！」
そんな言葉を投げかけられたこともある
がん闘病を知っていながら、
「今、なにやってるの？」
そう聞いてくる無神経な人もいた
一瞬、「なにやってるの？」という言葉に、
質問の意味がわからなかった
が、おそらく、
“仕事”のことなのだろう
「なにも．．．」
と言う私に、
「なにもしてなくて暇じゃない？」
との言葉が飛んでくる
呆れて何も言えなくなった
こんなとき、どんなふうに応えれば、
二の矢、三の矢の質問から逃れられるのだろう．．．
狭い“地方”という土地柄
職場に病を隠して働いている人もいる
がんになって、解雇された人も少なくない
「バレないように．．．」と、
日々、ビクビクしながら働いている人たち．．．
そのような質問には、
答えたくない人も多いのだ
手術をして間もなく、
検査のため病院に行ったときののこと
看護師さんに、骨シンチの注射を打たれながら、
「今日はお仕事休み？」
そう聞かれ、
「いえ、今は仕事してません」
と、答えると、
「じゃあ、主婦？」
「いえ、結婚してません」
そして、看護師さんが放った言葉は、
「えー、なにもしてないの？ いいなぁ、それ」
ありえない状況である
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Source: りかこの乳がん体験記
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