『2型糖尿病』は存在しない[7]普遍性はあるのだろうか

健康法

Ahlqvist博士の提案した2型糖尿病の新分類は斬新なものでしたが,かといって 突飛なものでもありませんでした.世界の多くの糖尿病医学者であれば,『やはりそうか』と納得のいくものでした.

漏れのないデータベース

博士がこの説を提案するのに用いたデータは,スウェーデンで2008~2016年の間に新たに糖尿病と診断された人のデータベース=ANDISからでした.

ANDIS: All New Diabetics In Scania

ANDISはスウェーデンのScania県の全住民(~120万人)の,新規に糖尿病と診断された患者データを一人残らず統合したデータベースです. 日本でこれに相当するものと言えば久山町研究ぐらいでしょうか.しかし 規模がまるで異なりますし,何よりスウェーデンでは,Scania県に限らず,全国民の医療データが一元化されているのです.

普遍性はあるのか

しかし,基礎となったデータがANDIS以外の場合は 違った結果が出るのではないか,という疑問は当然ありえます.そこで 博士は ANDIS以外の別のデータベースを用いた場合でも 同様の結果が出るのかを検証しています.
もしも ほかのデータを使った場合は 違う結論が出るというのであれば,この新分類には普遍性がないということになるからです.

そこで,ANDIS以外の下記のデータベースのデータに対して,同じ手法(= Data-driven Cluster Analysis)を適用しても 同じ結論になるかどうかが検証されました.
検証に用いたのは,下記のデータベースです. どのデータベースも 対象は漏れなく集められています.

データベース 名称 内容
SDR Scania Diabetes Registry 1996~2009年のすべての糖尿病患者7,400人以上のデータベース.ここから 1,466人の糖尿病と診断されてから2年以内のデータを使用.
ANDIU All New Diabeteics In Uppsala スウェーデン ウプサラ県(人口~30万人)の新規糖尿病患者データベース.ここからデータ項目の揃っている844人の新規糖尿病患者のデータを使用.
DIREVA Diabetes Registry Vaasa 西部フィンランド(人口~17万人)の糖尿病患者データベース. 2009~2014年の糖尿病患者5,107人を使用.

これらのデータベースで,Data-driven Cluster 解析を行った結果はこうでした.

従来の分類法ではこうであったものが;

それぞれ異なるデータベースを用いた場合,こうなりました.

The Lancet Vol.6(5) p361-369, 2018

ANDISを含めて,用いた4つの異なるデータベースすべてで ほぼ同じ結果が得られたのです.

このことから,博士が見出した糖尿病を5種類に分ける(1種は従来の[1型+SPIDDM]に相当,4種は従来の2型に相当)分類は,少なくともスウェーデン(+フィンランドの一部)では普遍的に存在するものであると証明されました.

[8]に続く

Source: しらねのぞるばの暴言ブログ

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