日本人の糖尿病患者についても,Ahlqvist博士の Data-driven Cluster Analysis手法で分類すれば,同様の結果となるのかどうかは非常に注目されます. なぜなら博士の分類した『4つの糖尿病』よれば,インスリン分泌不全による SIDDと,インスリン抵抗性を主体とする SIRD,そして 肥満が原因の MODや,加齢による MARDは,それぞれまったく別の病気となるからです.
しかし,日本糖尿病学会は2型糖尿は『悪しき生活習慣が原因』であり,『病態は多様である』ものの,一つの病気であるという立場です.
いったいインスリン分泌不足がまったく不足しているSIDDと,過剰なほどのインスリン分泌を示す SIRDとが,『同じ病気』と考えることが合理的でしょうか?
もう一つ,Ahlqvist論文は,2型糖尿病を 細分類すること自体が目的ではなくて,『それぞれのパターンの合併症転帰(=進行)は異なるのだから,早期にパターンの違いを見極めれば,それだけ早く適切な治療が行える.すなわち合併症を予防する確率が高まる』これを強く推奨することが目的なのです.
日本人のパターン別合併症
前回記事では,日本の福島大学に集められたデータを解析したところ,
Ahlqvist博士の結論と同様に,2型糖尿病は4つのパターンに分けられることが判明しました.
そこで,初診(又は 診断)時点で 合併症の頻度を これらのグループ別にみると以下の通りでした.
【注】
グラフはいずれも原文の Table.1 から数字を拾って作成したものです.
この数値は,原則として,[対象患者の初診時] 又は [糖尿病と診断された時点]のものです.
この数値は,各グループの患者の平均値です.
BMI/血糖値/HbA1c
スウェーデンでは MODの方がSIRDよりBMIが高かったが,日本ではそれが逆になっています.
SIDDの血糖コントロールがもっとも悪いのは,他の国の解析結果と一致しています.それ以外の3グループ,SIRD,MOD,MARDは,この血糖値状態を見ているだけでは区別がつきません.
インスリン分泌/抵抗性
SIRDは血糖値/HbA1cだけを見れば,MODやMARDと区別がつきませんでした.しかし このHOMA指標をみると,SIRDはきわめて危ういバランスで成り立っていることがわかります.SIRDは,極端に高いインスリン抵抗性を,これまたとびぬけて多いインスリン分泌で無理やり押さえ込んでいるにすぎないからです.SIRDのこの際立った特徴は スウエーデン,ドイツ,米国,中国での解析結果と一致しています.
腎症
腎症有症率 及び タンパク尿の発生率が高いことから,他の国の解析結果と同様に,SIRDの腎症リスクが高いことがわかります.しかもその腎症は 糖尿病患者によくみられる古典的な糖尿病性腎症ではなく、糸球体肥大および適応巣状分節性糸球体硬化症で特徴づけられる,肥満関連糸球体症(Obesity-related glomerulopathy),つまり糖尿病由来ではなく肥満由来の腎症である可能性が高いと,著者は述べています.
総体として,日本人の解析結果でも SIRDはやはり異質なものでした.SIRDは2型糖尿病ではないどころか,従来の糖尿病とはまったく別の概念の疾患ととらえるべきではないでしょうか.
[21]に続く
Source: しらねのぞるばの暴言ブログ
コメント